【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

かける言葉　土方side ページ11

「…リボンが、切れちゃって」
「片方が、風に飛ばされて、どっか、行っちゃいました」


「…なくなっちゃいました」


…言葉と言葉が不自然に途切れながらも、Aは俺にそう伝えた。その声は、戸惑っているかのような声にも聞こえるし、驚いているかのようにも聞こえるし、今にも、泣きそうな声にも聞こえた。A自身にも、まだよく分かっていないのかもしれない。自身が抱えた、その感情を。


「…」

土「…、そうか…」


…なんだかとても不思議そうな顔をして、Aは手に握られた、途切れてしまった赤いリボンを見据えている。今もそれは風に揺れていて、もうなくしてしまわないようにしているのか、強く強く握り締められていた。微かに震えた、その手で。


…そうか、なんて。ポロリと口にしたその言葉は一体何なのだろうか。自分で口にしておきながら、自分でそう思う。なんて、薄っぺらい相槌だろうか。そんな言葉しか目の前にいるソイツに言ってやれないのか。そんな言葉しか出てこないのか。俺はなんとも言えない不甲斐なさに襲われる。


…いつだってそうだ。Aが苦しそうな顔をしているのを見ても、無理をして笑っているときも、月を見上げて悲しげな顔を浮かべている時も、俺はかける言葉を探して、それでも見つからなくて、諦めて見なかったことにしていたのだ。何かしらの思いを抱えたソイツに、今まで何か、まともな言葉をかけてやれたことがあったか？


…いや、ない。一度もないのだ。

今も、言葉を探して、必死に探しているのに何一つ見つからない。だからそんな、適当な相槌しかうてないのではないか。数ある言葉達の中から、正解じゃなくても、ソイツにかけてやれる言葉は、きっといくらでもあったはずなのに。一番適切な言葉じゃなくとも、何かあったはずなのに。


…言葉が喉の奥に貼り付いたかのように、出てこない。


「……なんて、今日は風が強いのに窓開けっぱなしにしてたのが悪いんですけどね」


…と、Aは突然に顔を上げて、俺を苦笑いで見据えてそう口にした。「なくなっちゃったっていうか、自業自得でしたぁ」と。


…あぁ、また、そんな顔をさせてしまった。

…俺が何かしらの言葉をかけていれば、こんな辛そうな笑顔を見ることは、なかったかもしれないのに。


「ごめんなさい、土方さん。もう、大丈夫です」

土「…、」


…何かを言おうと、口を一度開けて、何も言えずに閉じて。


土「…そうか」


…また同じように、薄っぺらい言葉を返していた。

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