【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

一人で背負い込める強さ　土方side ページ2

自分の抱えたものを、すべて押し殺して、感情を露にすることを我慢出来てしまった。悲しいと、苦しいと、誰かに助けを求めることすらもしないまま、一人で背追い込むことが出来てしまった。いつだって彼女を救おうとしていた手があっただろうに、それに笑顔を向けるばかりで、その手を取ろうとはしなかった。一人で立ち上がることが、出来てしまったから。

…全部を自分一人で処理することが出来てしまったから。
…何もかもを、誤魔化して隠すことが出来てしまったから。


…転んでも、傷付いても、自分でどうにか埋めることが出来てしまったから。


…それほどまでに、彼女は強すぎてしまった。だがきっと、そんな強さは、持ってはいけなかったのだ。

…我慢して、堪えて、耐え抜いたとしても、それは後に自身を苦しめる。傷付ける。虚勢はいつの日か音をたてることなく崩れ去り、残るのはその残骸である、弱さだけ。


…そんな強さは、持ってはいけないのだ。


…すべてを一人で背追い込める強さなんて、持つべきじゃない。


「…土方さん、私、私は…」

土「…うん」


…か弱く、震えている小さな身体を、ギュッと抱き締める。震えが止まるように。何処にも行かないと告げるように。苦しそうに声を出すAの言葉を、いくらでも待っていようと決める。


「…ここに、来たら、もしかしたら、晋助がどうしてるのか、知れるかなって、思っ、てたんです…」

土「うん」

「…私が、し、んせんぐみに、入った、ら……晋助を止められるかなっ、て、思った、のに…！！」


嗚咽混じりの言葉は酷く歪で、それでも、これがAの心の奥に隠れていた、彼女が隠していたもののすべてなのだ。まっさらで、嘘なんざ何一つない、Aの本当の言葉。


「…でも、…そんなこ、と言ってッ…私は、」


ーーただ、私は、と。


「…晋助に、もう一度だけ、会いたかった、だけ、なんです…！」

土「…ん」


…ごめんなさい、土方さん。


…彼女は言う。本当なら、私は、斬られて当然なのだと。ここにいる資格なんて本当にないのだと。そんなことはないと、俺は首を横に振る。けれど、なんて言葉をかければいいのか、やはり分からなくて、ただただ、頷いて、抱き締めることしか出来なかった。


…Aは今でもずっと、10年間ずっと、同じ男を想っていた。ソイツのことを想って、真選組に入り、救おうと手を差しのべようとして、傷付いて、こんなにも泣いているのだ。


…Aは、こんなにも、激しく誰かを愛する奴なんだと、俺は思った。

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