▽ ページ22
目を開くと、ぼんやりと見えてきたのは真っ白なカーテン囲まれた世界だった。
あぁ、倒れたんだな、と頭のどこかで納得したせいか混乱はそれ程でも無かった。
それよりも、気になったのはーー
『ーー叶くん……なんでここで寝てるんだろ』
ベット脇で眠る叶くんだった。
その目には少し隈があるように見えて、どうしようも無い罪悪感に覆われる。
黛「あなたを徹夜で看病してたのは彼だからね。救急車に同乗したのも彼だし。その後もずっと、ね」
『ーー黛くん。そっか、叶くんが……。心配かけたね』
不意に聞こえてきた声に顔をあげると、白いカーテンの隙間から黛くんが入ってきた。
きっと、叶くんと同じように僕が起きるのを待っていてくれたのだろう。
僕の声に反応して、様子を見にきてくれた彼の目の下にもまた同じように隈がある。
黛「俺なんかよりずっと叶さん達の方が心配してたよ。明那なんか泣きそうだったし」
『うん、ごめんね。はぁぁ、若い頃はもう少し無茶出来たんだけどなぁ。もう歳かな』
重い病室の雰囲気を、まるで何も感じていないかのように戯けて見せる。
けれど、黛くんはそんな事意に介さず泣きそうな顔で顔をあげると叫ぶように口を開いた。
黛「俺たちって、そんなに頼りない？倒れるほど無茶して、そんな風に守られて俺たちが喜ぶとでも思った？」
『黛くん……？』
黛「侮るのも大概にしてくれる？俺たちは、あんたが居ないと何も出来ない程子供じゃない」
『………』
黛「……でも、そうあんたに誤解させたのは俺たちだから。だから、これだけは伝えておく」
「もう守られるばっかの子供じゃない。長谷部さんが目指す場所を、一緒に目指せるように努力するから」
「いつか教えて。長谷部さんがそんなになってまで目指してる場所を」
目にいっぱい涙を溜めて。必死に伝えてくる様子は、最初に見た黛くんと重なるようで。
伸ばされたその背は、あの頃の弱かった彼の面影はもう無くて。
いつのまにか大きくなっていた彼らの背中に置いていかれるような焦燥感は、いつの間にか無くなっていた。
『ーーありがとう…….ごめんね』
小さく溢された言葉は、明那くんがカーテンを開ける音に掻き消されてしまったけど。
確かに届いたその言葉は、いつか見た幼い笑顔をまた俺に見せてくれた。
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金木犀 - とても面白かったです！読みやすくてびっくりしました。 (2021年12月20日 23時) (
レス) @page23 id: b5d4ecbe80 (このIDを非表示/違反報告)
ビタミン(プロフ) - 宇琉夜ハルさん» コメントありがとうございます！読みやすい様、少し補足と話数の入れ替えを行ってみました……。文才が無いので、とんでもない文章になっている箇所もあると思いますが、見捨てないで頂けると嬉しいです！ (2021年9月14日 21時) (レス) id: 972b46e33b (このIDを非表示/違反報告)
宇琉夜ハル(プロフ) - 多分多分なんですけど！話数が飛んでる気がします (2021年9月11日 14時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
ビタミン(プロフ) - ルカさん» 初めまして！お返事遅くなってごめんなさい……。長谷部さんの過去編プロットがようやく書き終わったので、加筆修正しながら順次上げていきますね！続きをもう少々お待ちください！ (2021年9月5日 20時) (レス) id: 9b5756584c (このIDを非表示/違反報告)
ルカ - どーも、初めましてルカと申しまする！長谷部さんの過去みたいです。無理しないぐらいに更新してくれるとありがたいです。頑張ってください！（長文失礼しました） (2021年9月1日 12時) (レス) id: 9c2d201c16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビタミン | 作成日時：2021年8月28日 22時
