反社会的ユメノクニ。| Ryosuke.Y (ページ23)

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十一月、

涼介「よし。そろそろ行くか」

「うん。わたしも準備完了」

彼が施設で働き始めてひと月。

毎日、同じ時間＿＿＿＿
サポーターを巻いた左手と手をつなぎ
ゆっくりと、駅へ向かう。

「今晩の夕飯、何にしよっか？」

涼介「んー冷蔵庫の残りもんは……」

毎日、同じ時間＿＿＿＿
たわいもない会話を交わしながら
ゆっくりと、駅へ向かう。

涼介「じゃまた夜にな」

「うんまたね」

毎日、同じ時間＿＿＿＿
改札の前、手を解く。

毎日、同じ時間＿＿＿＿

涼介「………」

「……！」

キスを交わす。

通勤ラッシュで賑わうターミナル駅で人目
を憚らず不器用に愛情表現してくる彼。

毎日、
同じ時間のすべてが幸せだった。

涼介「うし。今度こそいってきます！」

グレーのパーカーに大きな黒のリュック。
いつも同じ服を着て改札を抜ける健気な背中を…

わたしは遠い目で見つめていた。

「………」

路線が違っただけでも
良かったと……思わなくちゃ。

最後に振り返って
もう一度手を振る彼に、
虚ろな目を開き愛想笑いを返すと

「………」

仮面の下から表れた不穏とともに、
わたしは本来向かうべき地下鉄の駅とは逆方
向に歩を進めた。

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