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「はつこい〜」より,とある場面の上杉君 ページ5

「初恋〜」での,とある場面の上杉君



 授業のチャイムがじきに鳴る。

 ジリジリと焦げつきそうな嫌な予感が,いよいよ形になろうとしていた。

 「アーヤ,来ないね。」

 心配そうに小塚が呟いたが,自分の性格上,小さく舌打ちするしかなかった。

 相手が若武や黒木だったら盛大に毒づいてやるところだ。

 なんせ,集合の理由がよりにもよって「“俺の”帰国祝賀会」と「若武の初恋」についてだったし。

 俺だって正直来たくなかった。はっきりいって,(前者と後者で多少ニュアンスは変わるものの)両方とも俺の知らないところでやってほしい。

 それでも来たっていうのに。

 「アーヤが集合に来ないのは,初めてだな。」

 思考の海に沈むように,黒木が目を伏せた。

 そうだ。

 立花だから,問題なんだ。

 俺が舌打ちしたのは,何も立花に苛立ったからじゃない。

 結構前の事件で,立花は探偵チームのことを《生きがい》とまで言っていた。

 いつも,立花は熱心に活動している。時には楽しそうに,時には真剣に。

 だから当然,集合をサボるなんてことはただの一度もなかった。

 その立花が来ないという異常事態に,胸騒ぎがしている。

 ――俺には,辞めるなと言ってのけたくせに。

 月夜の下でのやり取りを思い出す。

 目が見えなくなって絶望して,足手まといになるくらいならと自分から手を切ろうとしたときに,必死に引き留めた立花。

 あれ,男だったら,きっと黙って見送るところだ。そんで,関係が終わっていたはず。

 それを立花は,震える声で,弱い握力で,つなぎ留めてみせた。

 あの時は目が見えてなかったけど,あいつは・・・。

 「あ。」

 若武の間抜けな声で,急に現実に引き戻された。

 途端に,俺のことをじっと見ていたらしい黒木と目が合ってしまう。

 やべっ!

 「何だよ若武,早く言え。」

 とっさに口を開いて,若武に視線を誘導させた。

 当然,俺も視線をガッツリ若武に固定する。

 若武は,全員の視線が集中して失言に気づいたらしく,視線を泳がせた。

 ばつの悪そうな若武が口を開けたり閉じたりしている間に,俺も少しずつ冷静さを取り戻していく。

 ――なんで今,俺は焦ったんだ?

(↑続き)→←(↑〃)



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いしとせ(プロフ) - HUMAさん» 初めまして,HUMA様。コメントありがとうございます! 好きと言っていただけて,ものすごく嬉しいです。応援ありがとうございます,頭の中の話を全部形にできるよう頑張ります! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - うみなさん» いらっしゃいませ,うみな様! おまけの翼は,うみな様のコメントが全ての始まりでした……おそらく,コメントいただけてなければ生まれることはなかったです(;・∀・) というわけで,こちらこそありがとうございました!m(_ _)m (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - こういう本編の裏側というか、そんなお話大好きです!いしとせさんの他の作品も凄く好きです。更新頑張って下さい、応援しています! (2017年1月30日 21時) (レス) id: c49a03c503 (このIDを非表示/違反報告)
うみな(プロフ) - いしとせさん» こんにちは。黒木くんと翼のバトル!もう、大興奮でした。翼の策略も、黒木くんの想いも、全てが 物語に沿っており、楽しませていただきました(*^^*) 前回のコメで 私がポロっと口に出したことを 小説にしてくださり、本当に 嬉しいです!! ありがとうございました(#^.^#) (2017年1月30日 20時) (レス) id: 6278f7cc78 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - こんばんは,コメントありがとうございます。桜様も黒木君と翼推しなんですか! オトナな感じですね(笑) この2人のアイディアが出ればいいんですが……いろんな組み合わせを書いてみたいとは思っています。がんばります! (2017年1月15日 20時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いしとせ | 作成日時:2017年1月13日 21時

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