(↑続き) ページ3
(続き)
それを横目に,こちらは作業を続けたまま畳みかける。
「あなたは秀明に関するほとんどの人間にとって憧れです。今回いただいた連絡先が,今後活路になり得ることもあると思ったので。」
あえて世辞も愛想も切り捨て,相手の感情をより浮き彫りにしやすい空気を作り上げた。
さて,次はどう出る。
ほんの一呼吸,俺は彼の言動を観察した。
彼は,特に身じろぎ一つしていない。
表情が変わるわけでも,目線を泳がせるわけでもなかった。
けれど,彼は,――全身で,面白がっていた。
「コネを作るために,わざわざ別のコネからチケットを手に入れ,こうして腹の探り合いをしました,ってか。」
声を弾ませるだけでは勢いが止まらなかったのか,彼は工具をくるりと手のひらで回転させると,あっという間に全作業を終了させる。
そうして,俺とは比較にならないくらいの爆弾を落としてきた。
「お前,意外と純情なんだな。」
「……話がずいぶん飛躍していませんか。」
背中に冷や汗がつたうのが,いやにはっきり分かる。
表情や声を崩さないために,全神経を集中させなければならなかった。
それすらも彼の掌の上で,最終的に降参する未来しかないとはいえ。
「一から説明してほしいのか?」
「いえ,結構です。」
「面白いからノッてやるよ。せっかくだから前提からな。そもそもお前,フツーに腹芸できるだろ。相手の感情を読むのはもちろん,本音をさも冗談のように誤認させることなんて朝飯前。もっと言うと,別に交換条件じゃなくても,あえて俺に“借りを作る”ことさえできたんじゃねえか?」
こちらのことなどお構いなしの論法に悪態をつく暇もなく,じりじりと,格上の相手に追い詰められていく。
「それなのに,一番手間のかかる方法でお前は俺に接触し,交渉した。まずはここが1つ目のポイントだ。」
目の前の男の表情は,山羊を前にした獅子に似ていた。
20人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いしとせ(プロフ) - HUMAさん» 初めまして,HUMA様。コメントありがとうございます! 好きと言っていただけて,ものすごく嬉しいです。応援ありがとうございます,頭の中の話を全部形にできるよう頑張ります! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - うみなさん» いらっしゃいませ,うみな様! おまけの翼は,うみな様のコメントが全ての始まりでした……おそらく,コメントいただけてなければ生まれることはなかったです(;・∀・) というわけで,こちらこそありがとうございました!m(_ _)m (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - こういう本編の裏側というか、そんなお話大好きです!いしとせさんの他の作品も凄く好きです。更新頑張って下さい、応援しています! (2017年1月30日 21時) (レス) id: c49a03c503 (このIDを非表示/違反報告)
うみな(プロフ) - いしとせさん» こんにちは。黒木くんと翼のバトル!もう、大興奮でした。翼の策略も、黒木くんの想いも、全てが 物語に沿っており、楽しませていただきました(*^^*) 前回のコメで 私がポロっと口に出したことを 小説にしてくださり、本当に 嬉しいです!! ありがとうございました(#^.^#) (2017年1月30日 20時) (レス) id: 6278f7cc78 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - こんばんは,コメントありがとうございます。桜様も黒木君と翼推しなんですか! オトナな感じですね(笑) この2人のアイディアが出ればいいんですが……いろんな組み合わせを書いてみたいとは思っています。がんばります! (2017年1月15日 20時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いしとせ | 作成日時:2017年1月13日 21時