「さくらざか〜」より,とある場面の小塚君 ページ20
「桜坂〜」での,とある場面の小塚君
※今回は希望的観測の度合いが強いです。ねつ造注意!
春は,多くの命が芽吹く季節で,自分としては新たな命に出会える喜びと,その命が無事に誕生できるかという不安が織り交ざる。
今年の春は後者だった。亀が産卵するにあたり,その生命を守ってやらなければならない。
ただ,今年に限り,別の懸念もあった。
若武が,深刻な様子で消息を絶ってしまったのだ。
心配で探しにいきたいが,亀の命を放置することもできない。
結局,自分より遥かに優秀で動ける上杉に頼るしかなかった。
自己嫌悪の波に浸りつつ,それでも何かできることはないかと,体が空き次第,図書館へ行くことを決意する。
若武が最後に言葉を残した相手は自分なのだ。
ならば僕は,彼が真に何を言おうとしたのか正しく受け取らなければならない。
そのためには,若武の言葉の中で最も不明瞭な『救済』という単語について調べる必要があった。
柔らかな陽気の中,やっとこさえた空き時間をぬって,急いで自転車をこぐ。
普段ならば立ち止まりその息吹を感じる風景も,ただ春の風に流されていった。
けれども,春風はやはり花を運ぶものらしい。
顔に吹きかかる風に目を細めていると,
――見知った少女の背中が見えた。
*
「アーヤ。」
ほぼ無意識で,声をかける。
振り向いた彼女の瞳に,憂鬱な影の跡を見つけ,思わず息を止めた。
それも束の間,すぐにいつもの表情に戻った彼女は,春にふさわしい明るさで微笑んだ。
「小塚君。お出かけ?」
激しく心臓を打ち鳴らしていた不安が,別の感情に置き換わっていく。いずれにせよ,心臓が休まることはなさそうだった。
「ちょっと,図書館に行こうと思って。アーヤは?」
動揺を何とか抑えながらの言葉だったから,必死に絞りだしただけであって,深い意図はなかった。
しかし,彼女の心の痛むところを突いてしまったらしい。
走り去ったはずの憂鬱が,彼女の瞳を覆いつくした。
「私は,」
言葉を切って目を伏せて,唇だけを笑みの形に作り上げる。
「気分転換,かな。」
無理に浮かべさせた表情に,一層困惑する羽目になった。
今日は,塾がない。
春休みである以上,当然学校の授業もない。
彼女の心を蝕んでいる原因は部活動か家庭だろう。
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いしとせ(プロフ) - HUMAさん» 初めまして,HUMA様。コメントありがとうございます! 好きと言っていただけて,ものすごく嬉しいです。応援ありがとうございます,頭の中の話を全部形にできるよう頑張ります! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - うみなさん» いらっしゃいませ,うみな様! おまけの翼は,うみな様のコメントが全ての始まりでした……おそらく,コメントいただけてなければ生まれることはなかったです(;・∀・) というわけで,こちらこそありがとうございました!m(_ _)m (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - こういう本編の裏側というか、そんなお話大好きです!いしとせさんの他の作品も凄く好きです。更新頑張って下さい、応援しています! (2017年1月30日 21時) (レス) id: c49a03c503 (このIDを非表示/違反報告)
うみな(プロフ) - いしとせさん» こんにちは。黒木くんと翼のバトル!もう、大興奮でした。翼の策略も、黒木くんの想いも、全てが 物語に沿っており、楽しませていただきました(*^^*) 前回のコメで 私がポロっと口に出したことを 小説にしてくださり、本当に 嬉しいです!! ありがとうございました(#^.^#) (2017年1月30日 20時) (レス) id: 6278f7cc78 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - こんばんは,コメントありがとうございます。桜様も黒木君と翼推しなんですか! オトナな感じですね(笑) この2人のアイディアが出ればいいんですが……いろんな組み合わせを書いてみたいとは思っています。がんばります! (2017年1月15日 20時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしとせ | 作成日時:2017年1月13日 21時