「きえたじてんしゃ〜」より,とある場面の黒木君 ページ2
「消えた自転車〜」より,とある場面の黒木君
「お前の目的は何だ?」
面倒そうな表情に反して,実に興味深そうな声色で,隣の青年は言葉をつむいだ。
いや,いっそ“面白がっている”と断言してもいいのだろう。
彼の視線も手も,恐ろしいほどの効率で巧みに動いたままだというのに。
「先ほどお話ししたとおり,業者を装うためです。上背のある人間がもう1人必要だったので。」
こちらも視線を手の中の工具と機器に集中させたまま,まずは毒にも薬にもならない返答をしておく。
案の定,彼はそのつまらなさを鼻で笑った。
「今更な回答だな。それならそこらの暇人を連れてくりゃ済む話だ。」
そして,視線をこちらにジトリと向けて,先ほどより幾分か重い声で口を開く。
「かったるい答え方してんなよ。わざわざ俺に話を持ってきたことのメリットを聞いてんだ。」
「メリット,ですか。」
表情は一切動かさず,会話を最低限繋ぎながら,俺は目まぐるしく頭を働かせていた。
ここの返事次第で,今後の彼への交渉の難易度が変わる。
彼が期待している回答は“どちら”だろうか。
あるいは,どちらに転んでも構わないのかもしれない。
結局,もう少し踏み込んだ情報を,会話の比重が増えた分だけ追加するにとどめた。
「上背のある,機械類の知識に明るい,手先の器用な,口の堅い人物である必要があったので。」
「さっきとほとんど変わってねーぞ。」
「“コネを作らせてくれ”と言ってほしいですか?」
追加された一手により,案の定,彼の動作が止まった。
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いしとせ(プロフ) - HUMAさん» 初めまして,HUMA様。コメントありがとうございます! 好きと言っていただけて,ものすごく嬉しいです。応援ありがとうございます,頭の中の話を全部形にできるよう頑張ります! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - うみなさん» いらっしゃいませ,うみな様! おまけの翼は,うみな様のコメントが全ての始まりでした……おそらく,コメントいただけてなければ生まれることはなかったです(;・∀・) というわけで,こちらこそありがとうございました!m(_ _)m (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - こういう本編の裏側というか、そんなお話大好きです!いしとせさんの他の作品も凄く好きです。更新頑張って下さい、応援しています! (2017年1月30日 21時) (レス) id: c49a03c503 (このIDを非表示/違反報告)
うみな(プロフ) - いしとせさん» こんにちは。黒木くんと翼のバトル!もう、大興奮でした。翼の策略も、黒木くんの想いも、全てが 物語に沿っており、楽しませていただきました(*^^*) 前回のコメで 私がポロっと口に出したことを 小説にしてくださり、本当に 嬉しいです!! ありがとうございました(#^.^#) (2017年1月30日 20時) (レス) id: 6278f7cc78 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - こんばんは,コメントありがとうございます。桜様も黒木君と翼推しなんですか! オトナな感じですね(笑) この2人のアイディアが出ればいいんですが……いろんな組み合わせを書いてみたいとは思っています。がんばります! (2017年1月15日 20時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしとせ | 作成日時:2017年1月13日 21時