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【過去】
 ロキは、アースガルデン帝国の第1皇子の実の息子として生まれた。病弱だった王配は、ロキが産まれる前に亡くなった。皇子の父や皇帝の祖父の愛を一身に受けて育ったが、王配の体質を受け継いだのか、ロキは幼い頃から体調を崩しがちであった。
 そんな中、ロキが6歳の時、祖父が亡くなる。継承順位第1位である父は、第7代皇帝となった。父は、国中が祖父の死に悲しみうちしがれている中、また新たに昇る太陽のように、あるいは厳しい冬を乗り越えた先にある春のように、国の光となって、国民を照らした。ロキには、父の背中がユグドラシルのように大きく広く見えたものである。父は自分に対して厳格な人であった。この国の君主たる風格を持ち合わせ、いつも国民を第一に考えた。誰よりも勇敢で男らしく、勇者のように道を切り進んだ。
 ロキは父に憧れた。いつの日かやってくる、自分が玉座につく日を夢に見た。父のように威厳溢れる皇帝になった自分を。
 父はロキに繰り返して話した。「君主と国民は一心同体である」と。君主と国民どちらも国そのものの一部であり、君主は代表に過ぎないと。守るべきものは国土ではなく国民であると。国民は家族であり、親友であり、恋人であると。君主とは、国民の喜びも怒りも悲しみも、恨みでさえも、飲み込む存在なのだと。

 皇帝を目指す内、すっかり健康になり、すくすくと育ったロキが、14歳になった時である。軍学校に、悼報が飛び込んできた。
 公務でとある地を訪れた父が、とある老人に殺害されたとの事だった。老人は、祖父が前のアマンティア王国との戦争で死んだ事から、皇帝である父を刺したのだという。父は関係なかった。3代前大祖父が皇帝の時の話である。一方で、父は老人に目線を合わせて話をしようとしただけだった。ロキは一瞬、身を焦がす程の怒りを覚えたが、数秒後には消え去っていた。
 「君主と国民は一心同体である」からだ。恨みもまた、受け入れる存在が皇帝なのである。


 王配や祖父、父と度重なる死は、間違いなく帝国に不安を蔓延させた。
 ロキは出来過ぎなくらいの脳を限界まで回した。
 国民の不安を解消するには? ──次は、己が皇帝として君臨する一択である。不安定な国民を安心させるには、自信に溢れた、強い皇帝にならなくては。絶対的な帝王にならなくては。でないと、導くことはできない。

 かくして、ロキ・キングキャスリングは、14歳にして王位を継承したのである。

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safia*(プロフ) - ありがとうございます!ボードの方にお邪魔しても大丈夫ですか? (2020年11月21日 20時) (レス) id: 8e1c09fa0a (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - safia*さん» コメントありがとうございます。是非組ませて頂きたいです! (2020年11月21日 20時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
safia*(プロフ) - コメント失礼致します!【技術開発局局員、ヴィクトール・ロンベルク】でこの企画に参加しています、safia*と申します。よろしければ関係組んで頂けないでしょうか...? (2020年11月16日 8時) (レス) id: 8e1c09fa0a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くろせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月17日 14時

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