No.146 ページ47
無数の神子と共に、世界は変わった。
朝日の中、互いに押し潰されそうな空気に頭を垂れ、自らが作り出した大いなる虚無の監獄に囚われている。
思い悩むことをやめれば呑まれてしまいそうな大地では、融けた希望など掴み取れそうにない。
天上は穏やかさと絶望を含んだ光をもってそれらを照らし、痩せ細った彼らの精神を焼き始めていた。
時に神子達の前へ進み出た白髪の創造主もまた幼子であり、しかし彼らとは違った想いでいた。導き手とは、恐れ無くあるべきである。
彼は死の光を背後に携え、そこから抜き取った奇妙な形状をした何かを崩壊した鉄の海にばら撒く。
宝石に似たそれが水に落ちたように消えゆくと、すぐにキラキラとした歪な花になった。
それは罪悪で構成され、同時に醜い希望から成っていた。
伸びた茎の全てに痛みが廻り、葉先からは苦しみの水滴が零れ、蔓は空虚を抱いて衰亡の環となった。
頂点で美しく輝く花は大輪の朝顔に酷似しており、甘やかな終末を受け、全く新たな光を映し出していた。
神子達の視線が縫われて引かれるようにそこへ向くと、やがて花は次々に開いて古き地を完全に覆い尽くし、瞬く間に希望を取り込んだ金色が世界に咲き乱れた。
おそらくは現実である光景に、ある者は歓声を上げ、ある者は立ち竦む。
彼は廻り続ける花と滅びの環によって喜び、笑い、新たな力をもってそれを打ち砕いた。
死んだ世界に鮮麗な花弁が舞い散り、恐るべき記憶を湛えた絆が根を張る。まもなくそれらは血を呑み、苦悩を啜り、この世界に幸福をもたらすだろう。
この美しき原罪は、神子達の目に光を灯した。
改めて自らの奇怪な監獄と世界に向き合い、再生の意味を見出す。
その安寧と愚行の先に待つのは同じ結果だったとしても、そうして彼らはこの世界に希望を見つけるのだ。
星のように様々な声が上がる中で、彼は微笑みながら歩を進める。
片手には彼の背丈よりもある光の杖が握られており、それはいつか、どこかの屋敷で手に取った白黒の杖に似ていた。世界の主になった今なら、幼子でも様になるものだろうか？
色とりどりな感情の海を進み、花の舞う空を見つめる一人の前にやって来る。不思議と喧騒とは隔たりが出来たかのような静けさを感じた。
晴れやかさの中で陰の落ちた黒髪を靡かせる、もう一人の主たる親友に、確かに手を差し伸べる。
彼らの約束は果たされ、同時に再びの繋がりを、それだけは確かに彼は誓った。
運命を共有する相手が、その瞳にあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (
レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした！あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…！本当にありがとうございました！！ (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました！主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした！剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
