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No.130 ページ31

──いつか異能力者と歩める未来が来るかもしれないよ。
数ヶ月前に偶然再会した、かつて共に勉学を励んだ聡明な少女──今は女性と言うべきか──と少しだけだが別った後の話をした事を思い出す。
彼女は高校卒業後、大学で異能力の研究をしていたと言う。何故かは知らない。只、彼女は興味があったからと言う理由だけで、誰もが不毛だと言う研究を続けて、結局辞めてしまった。

彼女は言う。皆、神を信じているのだと。
ドグマティックな理論は、例え神の存在を否定する無神論者であっても持っている物らしい。何故ならそれは偶像でありながら、人の心を巣食う魔物だ。否定しようが何だろうと、その存在を忘れない限り──虚無にならない限り、人は一生神に囚われ続ける。
彼女は言う。その存在を否定する事も、忘れる事も、虚無になる事も出来なかったと。だから、研究を辞めた。正しくは挫折。彼女は辞めたくなくても辞めたのだ。

それでも、彼女は信じて止まなかった。異常者が正常者と共に歩める世界がいずれ訪れるのだと、誰もが認め合える未来が来るのだと、ずっと信じていた。
(ねぇ、金剛さん。これを見ても、まだそんな絵空事が言えるかい)
世の中、なんて世知辛いのだろう。
出る杭は打たれる、実に分かりやすい否定の意思だ。彼女は打たれたのだ。それはもう木材が凹む程打たれて、打たれて、打たれて……バールでは引き抜けないぐらい打たれてしまったのだ。
だが、彼女はそれでも構わないと言った。

「だって私、タラレバなんて一言も言ってないよ。そうでしょ、斎槻君」

馬鹿みたいだ。それが無意味な事だって、誰も認めてくれないって彼女は嫌と言う程分かっている筈なのに。
彼女は真っ直ぐ僕を目を見て言うから──

「信じてみたいと思ってしまったんだよ。だから、襲撃されたのが此処東京のど真ん中で心底──嗚呼、そりゃもう胸の奥深く、腹の底から安心したさ」

君は生きているべき人間だ。僕みたいに自分の為に汚泥に手を伸ばし、剰え許しを乞う屑よりよっぽど存在価値がある。
それに、生きていれば必ずその願いは叶えられる。
本当、馬鹿はどっちだ。
異能力は神が与えた恩恵、試練、厄災──違うだろ。ストレスから来る異常性──さぁ、知らないな。異能力がどうして発現するかだなんて興味は無い。どうであれ異常者になってしまうのだから、事実は何も変わりはしない。
だが、それに対する理解を広げる事は出来る。その為には、まず土台が必要だ。ならば、その土台。

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花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした!あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…!本当にありがとうございました!! (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました!主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした!剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした! (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カレーライス x他10人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年8月4日 11時

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