No.91 ページ42
どうせ死ぬなら最高の舞台で。
その為に僕は此処に来た。
つまり、僕にとってはこの組織は死ぬ為の手段。世界を作り直して死ぬ為に、僕はこの組織を利用している。
(まぁ、認められないのも当然か。そんな僕がよく隊長の幹部職を担ってるなと思うよ。我ながら笑ってしまう)
目的は同じなのに、その先の未来をレブルの皆と共に歩むつもりなんて更々無い。だから、皆とは相容れないのだ。
(だって必要ないだろ、僕の存在なんて)
「ねぇ、いっちゃん」
不意にインカムから一郷さんの声が聞こえた。
「なんだ」と短い返事を返すと、彼は少し口籠もりながらも、「あのね」と小さく言葉を続けた。
「死なないでね」
「……死ぬ訳無いだろ」
「そ、そうよね!」
「ごめんなさい」と彼は謝罪すると、すぐにインカムの接続が切れた。
静寂に包まれた現場で、僕は黙って一郷さんの言葉を反芻する。
(死なないでね、か。そうか、やはり……)
運命に見放されているらしい。この現世に縫い付けてくれる僕の理解者は誰も居ないみたいだ。
彼は気遣いのつもりで言ったんだったんだろうが、僕にとっては刃物で心臓を一突きにされた気分だ。
(結局、誰も
それはラビッシュに居ようが、一般人のままで居ようが、きっと誰も言ってはくれない。生きているこそに価値がある世の中、誰も死んでくれとは言わないだろう。
その言葉はまるで見えないナイフだ。容赦無く突き刺してくる、慈愛に満ちたナイフ。
(嗚呼、此処がプルガトリオだったなら、その慰めの言葉でこの穢れた手が浄化されるのに──)
そうしたら、きっとレブルの皆と歩む未来があったかもしれない。
前方で人影が揺らめく。
仲間が笑いながら過ごした世界が崩壊する。あの愛しい時間にはもう帰れない。
「僕が死ぬ時期が近いのかもしれないね。もうすぐお互いの組織とも、この世界とも決着が着く気がする。でも、僕に引導を渡す役は君じゃないよ」
今、仲間といるこの瞬間が最高に楽しい。
でも、もっとだ。
この身を焦がす業火はまだ温い。
「総員、戦闘開始と行こうか」
ナイフが空気を裂く音が鳴る。
僕は今、当たり障りのない笑顔で、目の前の敵を迎え撃つ。
全ては、
***
レブルとラビッシュの拠点周辺。
少女は拡声器片手に歌を歌う。
今から戦争が起きる。
逃げてと願いながら歌い続ける。
例え、声を枯らしてでも、誰かの命を守る為に。
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すふ丸@課題消化につき低浮上(プロフ) - 盛り上がってますね……!更新ペースが落ちないので凄く安心感があります。えげつない量の課題を与えられてしまったため中々更新はできませんが、皆様が第三部にどう繋げていくのか、企画参加者として今後の展開を楽しみにしております\(^o^)/ (2018年7月29日 13時) (レス) id: d6d481a1f7 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 第二部、二つの組織がぶつかってからの怒涛の更新……! 皆様お疲れ様です。 (2018年7月29日 13時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
一酸化炭素。(プロフ) - 遂に幻聴が聞こえ始めたかもしれないウチの子…誰か助けて (2018年7月27日 12時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - あはー、また謎の文字化けしてる……。一体なぜ。 (2018年7月27日 11時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - Sakiさん» 淋ちゃんは流架さんラブなので必然的に出ますよw (2018年7月26日 21時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
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