No.74 ページ25
「剣士、この人を知ってるのかなんなのか知らないけど、ラビッシュの皆を守らないと!!」
タイミングが良いと言えるのか、悪いと言えるのか、雷が落ちたと言っても差し支えない勢いで割って入る人型。
同時に彼の暗い瞳に再び光が灯り、しかし心は持ち直せていないまま、光揺らめく視界に醜い希望を映した。
このゴミを消し去ることができれば、せめて昔の幸せだけでも。
一瞬の儚くて眩しい希望を見出した後、彼は片手を上げ、光を集めて刃物に変える。
彼の周囲を花冠のような美しい光の群れが廻っては取り囲み、彼が命じるままに眼前の人型を突き刺した。
小さく零れた悲鳴と共に血が噴き出し、その鮮血も傷口もキラキラと輝く。それは形ある煌めきを纏って人型を傷付け、茫然と立ち竦む青年に確かな恐怖を与えた。
彼はというと、影の落ちた暗い顔に不確かな笑みを浮かべ、背後に目を突き抜けんばかりの光を携えて佇んでいた。
単純な事だ。闇は光によって生まれる。昼間を塗り潰すのが夜であるように、彼の心の煌めきを強くするのは闇なのだ。それが良かれ悪かれ、耐えがたい喜びと苦しみが彼の口端を吊り上げる。
ゴミはなくなる為にある、純粋な悪は光で壊される為にある。それをやってしまえば、後は綺麗なものしか残らないはずだから。
彼はもはや満ち足り、確信して剣を引き抜いた。
苦しみを生むものはなんであれ破壊すればいい。大人も、世界も、この青年の大切なものも。
「……私は。……レブルの、首領だ」
――シアワセな夢だけがいい。
苦しみで汚れた残酷な夢は、この手で砕いてしまおう。
この子だって、今壊してしまえば、昔の美しい記憶だけ――
――――
騒ぎに寄ってくる人型を笑顔と共に突き刺し、切り裂き、しかしそれらには目もくれずに、ただ青年だけを見上げて剣を振るう。
美しい光と鮮血が大河を成し、青年の刀を握る力はどんどん荒々しくなり、激情のままに血の海を踏んで彼に斬りかかる。
流れ出る生温い血液も、影が滲んだ紫色の傷口も、彼はどうでもいいようだった。感覚すらもう確かでなかったのだ。血を失ったせいなのか、違う理由なのか、それに興味は無かった。
不気味に輝く傷口を押さえた青年の口から“白瀬”の名が飛び出す度に、褪せた血と暴力の記憶が瞳の底に蘇る。
忌むべきその名を聞くほどに正常から逸脱していく気がしたけれど、今更だった。
今はただ、苦しみを与えるこれらを壊したかった。
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すふ丸@課題消化につき低浮上(プロフ) - 盛り上がってますね……!更新ペースが落ちないので凄く安心感があります。えげつない量の課題を与えられてしまったため中々更新はできませんが、皆様が第三部にどう繋げていくのか、企画参加者として今後の展開を楽しみにしております\(^o^)/ (2018年7月29日 13時) (レス) id: d6d481a1f7 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - 第二部、二つの組織がぶつかってからの怒涛の更新……! 皆様お疲れ様です。 (2018年7月29日 13時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
一酸化炭素。(プロフ) - 遂に幻聴が聞こえ始めたかもしれないウチの子…誰か助けて (2018年7月27日 12時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - あはー、また謎の文字化けしてる……。一体なぜ。 (2018年7月27日 11時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - Sakiさん» 淋ちゃんは流架さんラブなので必然的に出ますよw (2018年7月26日 21時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
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