好きって何。 ページ9
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周りの音を遮断するように
耳にイヤホンをねじ込む。
少しハスキーな、邦ロックバンドだけど英語の歌詞を歌う彼ら。
アップテンポの激しい曲で、何もかも忘れる、聞こえなくなる。
頭の中で何度も大声で歌って、この嫌悪感を無くしたい。
その時私は、不意に肩を掴まれた。
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『...っへ、！？』
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体をビクつかせ、恐る恐る後ろを振り向く。
耳から外れたイヤホンから音漏れ。
『......か、ず』
和「お前音デカすぎ。何回呼んだと思ってんの」
『ご、ごめん』
和「はーーそのうち死ぬよ？」
『え、なんでいるの？』
じろりとこちらを見て、またため息。
和「2人で帰んのかと思って、なのに下駄箱行ってみたらあの先輩とおーのさんがふたりだし」
『あぁ』
和「お前いないし。なんなの？と思ったわけ」
『2人で帰るんでしょ、それ以外の何物でもないの』
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私の言葉を聞いて、再びため息をついた。
ため息多いな。
和「それでいーの？」
『なに？』
和「おーのさんが2人で帰るの、あなたそれでいーの？」
『...いいも悪いもないでしょ』
和「ばかだねぇほんと」
だって。
だってやなの。
『だって』
和「ん？」
『だって見たくないの』
和「...」
『智があの人と一緒にいるのなんて見たくないの』
『きらいなの。』
胸がざわざわして、なんだか変に苦しくて。
きらい。あんなのきらい。
そうなる。
しばらく訪れた沈黙。
そして、破ったのは和だった。
和｢あなたのそれはさ、｣
ひどく躊躇いながら和が言う。
｢.....好き、なんでしょ｣
『なにを？』
和｢おーのさん｣
『.....は？』
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和｢Aは、大野さんのこと好きなんだよ｣
なにを、
何を言ってるんだ。
『そ、そんなわけないじゃん』
和｢分かるよ、ずっと見てたから｣
和は、いつも冗談を言うときみたいなにやにやした笑みは1つもこぼしてなくて、すごく真剣な顔をしていた。
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作者名：いろは | 作成日時：2021年1月30日 23時
