堂々巡り ページ12
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誰にも、取られたくない。
自分のものだけにしたい。
他の誰にも、この居心地の良さとか雰囲気とかを取られたくない。
それはどういう気持ちなんだろう。
智「あーお前、先着いてんじゃんよー」
『あ、さとし...』
聞き慣れた声に顔を上げたら少し寝癖がついた頭の智がいた。
智「ったくもー、先行くなよ」
『あ、えと』
智「ぁん？」
『ご、ごめん』
智「ん？なんかあったの？なんか素直じゃね」
『っは、そ、そんなことないし』
智「ふぅん」
不思議そうな顔をして私のことを首を傾げながら見る智に対して、なに！と言いながら少し睨むと、いつも通りになった気がした。
大丈夫、大丈夫。
いつも通りだよね。
にやにや笑いながら傍観してた和をよそに自分の席に座る。
智「なぁ」
『...』
智「Aってば。」
『えっ！あ、なに？』
智「お前ほんと大丈夫か？」
私が上の空になっているのか、心配そうに智は席から立って私の顔を覗き込んだ。
『っま、まって、ちかいちかい！』
智「んだよいつものことだろ、普通だよ」
『近いよ！その普通が普通じゃないの！』
智「お前なんかおかしくねぇ？」
な、なんだ。
なんかいつもみたいに普通に返せない。
いつもはもっと、軽く返せてたのに。
これくらいの距離、何ともなかったのに。
なんでだ。
心臓がちょっとはやい。
私が、智にどう思っているのか。
きっと幼なじみとしてそばにいた存在がいなくなることが寂しい。
それだけでしょう。
特に意識するようなことは無いはずだ。
それなのに。
それなのに。
少し近づいたと思ったのに、またわからないことができた。
これじゃ、堂々巡りみたいだ。
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作者名：いろは | 作成日時：2021年1月30日 23時
