雑誌 ページ12
Aside
今日は時代劇をコンセプトにしたお祭りに引退馬をお貸しするお話しに行ったあと、今週末にあるG1レースに向けた取材を受け、やっと一息つけると思いたいところですが電車で明日予定されてる追い切りのために現地に移動です。
※追い切り。レース直前に行われる走りのことでその馬の調子やタイム(速さ)をはかるもの。その姿は動画や記事として一般にも公開される。
「大変申し訳ありませんでした！！！」
取材の記者の方を待っていれば、私が中学の時から取材に来てくれる記者さんが来て土下座。
唖然としました...
A「顔を上げてください！！私、何かされたような記憶ありませんし、ね？」
「いえ！私の指導していた後輩が、写真偽造までして藤宮さんの熱愛報道を書いたとマネージャーさんから伺いました！！本当に申し訳ございませんでした！」
一向に土下座から顔を上げてもらえなくてオロオロしていれば、周りからの視線。
A「ひ、ひとまず、電車乗りませんか！？」
そんな状況にたまらずそんな提案をした訳で...
只今、グリーン車の中でございます...
A「確かに、酷い記事だなとは思ったんですが、私の未熟さもありますから、お互い様っていう事にしませんか？」
そう言っても「しかし、、、」とまだ納得がいかない様子。
A「明日は追い切りありますし、ネタにどうですか？あ、ほら、前話してた勝負飯特集とか、、」
兎に角もう土下座はごめんだ、という思いで必死に誤魔化しますが、私はとある疑問に行き着きます。
マネージャーって、誰の事でしょう...
「藤宮さんの記事で飯食わせてもらってる人間が、本当にすみませんでした...。こんな事になったのにまだ私に記事を書かせていただけるんですか...？」
中学の時からですから、もう随分長い付き合いになるわけですが、あの頃の私は騎手になんて絶対ならない！って荒れてた時期でした。
そんな時、この人に出会いました。
息子が、貴方とレースで競い合う事を夢だと語っているというお話を聞いて、雑誌で唯一取材を受けているのはこの方だけでした。
それからずっと、私を励ます記事、応援する記事を書き続けて...そしたらその記事が有名番組の番組プロデューサーの方の目に止まり私は今のこの知名度を得ることができました。
昔はうんざりしていた世間からの目も年を追うごとにありがたいものだと気づかせてくれたのも、この方あってこそでした。
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作者名：伊織 凛 | 作成日時：2023年6月18日 15時
