私は今日もトスを上げる【3】

1話：俺は今日もトスを呼ぶ ページ17

side翔陽


初めから嫌われていたわけではない


ただ、徐々に溝ができて、徐々にその溝が深まっていって……


そして中3の冬、陽奈に初めて怒鳴りつけられた


胸ぐらを掴まれた時は正直驚いたなんてもんじゃなく、こんなになるまでどうして俺は気づかなかったんだろうっていう自分への失望感まで味わった


大切な妹で、唯一無二の双子の片割れをどうしてこんなに傷つけてしまったのか


バレーを先に始めてる陽奈に教えを請わなかったのは、恥ずかしかったからだ


女バレの人たちと一緒にやるのも周りにからかわれて恥ずかしがって、やらなかった


それと同じで、多分俺は、変なプライドを持っていた


｢ごめんな、陽奈｣


翔陽は苦しそうに眉を寄せて言った


分かっている


こんなこと言っても陽奈の方が何倍も辛くて、苦しいことは


けれど言わなければと思った


『私、出てく』


「「え！？」」


翔陽と夏が同時に陽奈の方を向いた


それからの陽奈はいつもとは違っていて、近寄りがたかった


陽奈が引っ越す時も何も言えなかった


黙って見送った


俺が何かを言おうとするたび、陽奈は嫌そうな目でこちらを見てきたからだ


陽奈、ごめん、俺が中途半端なせいで


翔陽は拳を握った


＊


それから翔陽は烏野に入った


烏野では妹が2人いることを言っていたが、どうしても双子のことを言う気にはなれなかった


陽奈は自慢の片割れ


けれど、自慢しようとそのことを話せば、周りの子達はみんな微妙な反応を返した


あんな子が、あの子が、翔陽の双子なの？バレー以外何も取り柄なんてなさそうな子が、とでも言いたげに


もちろん烏野の人達がそんな反応をするはずはないとわかっていたが、陽奈の負担をこれ以上増やしてはいけないと、翔陽は決して陽奈のことは言わなかった

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