嘴平くんに好かれない２【鬼滅の刃】【キメツ学園】

第74話 ページ29

キメツ神社のお祭りは、それはそれは賑わっていた。


「すごい人だね、伊之助」

「すげぇ…こいつはすげぇキラキラしてやがる！」


伊之助が随分と楽しそうな様子なので、私もテンションが高まってきた。

さっきは伊之助が変なこと言うもんだからドギマギしてしまったが…
普通に戻ってよかった。


「おいA！あの面欲しい！！」

「え…なんで猪」

「ハッお前分かってねぇな。猪は山の王の証なんだぜ」

「(初めて聞いたわそんな話)」



伊之助は、早速出店のおじちゃんからお面を購入しにいく。


彼がどの猪の面にするか悩んでいる間に、私は近くにいた幽霊さんに耳打ちした。


「あと少ししたら交代しましょう」

《…本当にいいのかい？》

「大丈夫です、伊之助いまテンション上がってて気付かないだろうし」


私達の作戦はこうだ。

最初から幽霊さんが乗り移った私で伊之助に会うと、彼は違和感を持ってしまう。

なので、暫く私のまま遊んで、伊之助が祭りに夢中になってから交代しよう、と。


そしてバレを防ぐために、幽霊さんには疲れたフリで極力喋らないでもらいながら、
伊之助と数時間関わってもらう…というプランである。



彼女が思い出すかは分からない。

でも、彼女が直接伊之助と関わった方が、確率はきっと高いはずだ。



《…Aさん、バレるかバレないかの話じゃなくてね》

「え？」

「オイAー！俺様はこれにしたぜ！！」



幽霊さんが私に心配そうな言葉を掛ける。
聞き返そうとするも、伊之助が戻ってきてしまったため彼に視線を戻した。


が、彼の姿を見た途端、


私の心臓がバクンと音を立てた。



「どうだ！カッケェだろ！」

「…あ…う、ん…」


言葉が出ない。


彼が選んだ面は、鼠色に青い瞳の猪の面。


あれ？

私、この姿、どこかで…



「なにボーッとしてんだよ！行くぞ！」

「！！」



高まる気持ちが抑えられない伊之助は、呆然とする私の手をとり走り出す。


違和感に溺れそうになっていた私だったが、
突然手を握られたことにより、意識がそちらに引っ張られてしまった。


ごつごつとしていて、大きい伊之助の手。



彼の手の感触を感じれば感じるほど、
私の心臓がうるさく音を立てる。



もう少し、伊之助とこうしてたいなあ



「(…って、何考えてんだ)」



考えを消すように、私は頭をふる。


そろそろ、彼女に体を貸さなければ。





私は伊之助の手を、少しだけ強く握った。




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