ニセモノを探せ*45 ページ5
坂田は「え？」と呟いて目を丸くさせた。
けれどすぐにハッとした表情になり、頬杖をやめ体を起き上がらせる。
「……誰かになんか言われたん？」
「……うん」
「まーしぃあたりか」とボソッと呟かれた言葉に私はビクッとなりながらも何も答えずにいた。
ここで怖気づいてはいけない。
強気な気持ちで坂田をグッと見る。
坂田は私をチラリと見てそして、「ごめん」と呟いた。
「ごめんって……嘘ってこと？」
「……うん」
「どうして、そんな嘘を」
気まずそうに視線は横を向いている。
そしてもう一度「ごめん」と呟いた。
真っ赤な目が何を捉えているのか、私には分からない。
「………Aの事を、疑ってたから」
「え？」
「いや、ちゃうな。皆の事を疑っていたから、うらさんと嘘ついた」
「どういう、こと？」
ようやく坂田が私の方を見た。
丸い目が少し揺らいでるように見えて、心の何処かでちくっと痛みを感じる。
その丸い目に映っている私は、水を見た時に映る虚像のようにゆらゆらと揺れていて。
「散策したとき外出れんのかなってうらさんと話して、そしたら出れて。でも、それを皆に言うたら行動範囲が広くなるんちゃうかなって」
「うん」
「行動範囲が広なったら誰が何処におるかわかりずらくなるやん？その分ニセモノが誰かって見つけにくくなるんちゃうかなってうらさんと話して。やから、聞かれたとき嘘ついた。ごめん」
声が震えているのを聞いて、ああこの人は本当の事を言っているんだなって直感で分かった。
私は坂田の説明を聞いて、思わず「良かった」と言う声が漏れてしまった。
冷たくなっていた手足に体温がじわりと戻ってきた感覚。
そして私はもう一度「良かった」と声を零す。
「良かった…って？」
「……私、本当は坂田の事疑いたくなかったの。でもこうやって話聞いて、ちゃんと理由があったんだなってわかって、…………これなら坂田の事を疑う理由がなくなるから、良かったなって」
「……Aは俺がニセモノ、とは思ってへんの？」
「可能性は、もちろんあるよ。でも、坂田はホンモノだって信じたいの」
私の言葉を聞いて、坂田は驚いたように目を丸くさせる。その目に映る私はまだゆらゆらと揺らいでいて。
そして映る私がぼうっと大きく揺れて、坂田の目からぽたりと大きな雫が落ちていった。
「……よかっ、たぁ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 763人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
菊香(プロフ) - Reigaさん» 返信遅れて申し訳ございません（ ; ; ）初のホラーに挑戦してみたのでそう言っていただけると嬉しいです〜！読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (
レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 恋羽音さん» 返信遅れてしまい申し訳ございません（ ; ; ）たくさん考えて読んでくださり嬉しい限りです！個人的に頑張って考えたお話だったのでそう言っていただけるとありがたいです(^^)読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
Reiga - スッッッゴイコワカッタ、、、面白かったです (2021年5月25日 22時) (レス) id: de484b603d (このIDを非表示/違反報告)
恋羽音 - 今更ですが、最初から一気に読ませて頂きました。伏線の敷き方がとても上手で、とても面白い作品でした！途中、「urtさんか？…smさんかも…」と悩んでいたのですが、ラストに全てひっくり返されました！鏡の世界のニセモノ、ホンモノというのがとても良かったです！ (2021年3月30日 18時) (レス) id: 018cf43ff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - みほろさん» 半年遅れての返信本当に申し訳ございません（ ; ; ）たくさんの嬉しい言葉、ありがとうございます！とっても嬉しい限りです(*´艸`*)読んで頂きありがとうございました* (2020年12月28日 21時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
