ニセモノは……*60 ページ20
『俺な、誰がニセモノとか全然思いつかへんのよね』
昨日のセンラの言葉が脳裏によぎる。
「……センラ、」
うらたがグッと拳を握り、センラの目を見る。
翠はまだ揺れていた。緑の目に黄色が微かに映るのが見える。
「本当に…本当に、白紙でいいのか？」
その震えた言葉でうらたの言おうとしていることが分かり、思わずハッと息を呑んだ。
二票が入っているセンラ。もしうらたか志麻に票を入れていたら決選投票になるはずだった。
けれど、センラは誰にも票を入れなかった。
「お前がニセモノだ、って俺らの中でなってしまうけどそれで、本当にいい？」
「……っ、」
「……今なら、他の誰かの名前書きたいなら俺ら待つから」
私たちは何も言わずにセンラの言葉を待った。
勿論今センラが誰かの名前を書いたって反対するはずがない。
センラは何秒かの沈黙の後、スッと息を吸った。
「………俺、やっぱり白紙のままでええよ」
「……ほんまにええの？」
志麻が静かにセンラを見た。
センラはその視線を受け止め、弱々しい笑みで返す。
「今から誰かを決めようなんて、そんなの無理やから」
「……わかった」
志麻が視線をうらたに流し、うらたがその視線に頷く。
そしてあの白い紙に鉛筆を向ける。
『ニセモノだと思われる人の名前をここに記してください』
『＿＿＿＿センラ』
小さく息を吐いてうらたが鉛筆を机に置く。
私たちの中で出た結論。
そしてそれをうらたが今、紙に書いた。
けれど、
「………何も起きへんな」
坂田の言葉に小さく頷く。
さっきと変わらない左右対称の景色。
「……ニセモノは、センラじゃなかった……？」
だとしたら今、私たちは間違ってしまったんだろうか。
間違えてしまったら、もう元の世界に帰れない？
想像したくなかった結末が脳裏に過ぎり心臓がドクンと跳ねあがる。
ジッとすることが出来なかった。
変に出てきた冷汗と早くなるばかりの鼓動をジッとしたまま受けるなんて出来っこなくて、少しだけ机に乗っかっていた消しかすを集めてゴミ箱に捨てに行く。
近づいて分かった。ゴミ箱の中に何か白いものが入っている。
ゴミ箱の中は何も入っていないと思い込んでいた。
私たちしかいないこの世界でたくさんゴミなんて出るはずないし、出たとしても少ないだろうって。
“それ”が何かが分かる距離になった瞬間。思わず足が止まった。
「＿＿＿＿＿え、」
ビリビリに破かれ捨てられたスケッチブックの一ページがそこにはあった。
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菊香(プロフ) - Reigaさん» 返信遅れて申し訳ございません（ ; ; ）初のホラーに挑戦してみたのでそう言っていただけると嬉しいです〜！読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (
レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 恋羽音さん» 返信遅れてしまい申し訳ございません（ ; ; ）たくさん考えて読んでくださり嬉しい限りです！個人的に頑張って考えたお話だったのでそう言っていただけるとありがたいです(^^)読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
Reiga - スッッッゴイコワカッタ、、、面白かったです (2021年5月25日 22時) (レス) id: de484b603d (このIDを非表示/違反報告)
恋羽音 - 今更ですが、最初から一気に読ませて頂きました。伏線の敷き方がとても上手で、とても面白い作品でした！途中、「urtさんか？…smさんかも…」と悩んでいたのですが、ラストに全てひっくり返されました！鏡の世界のニセモノ、ホンモノというのがとても良かったです！ (2021年3月30日 18時) (レス) id: 018cf43ff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - みほろさん» 半年遅れての返信本当に申し訳ございません（ ; ; ）たくさんの嬉しい言葉、ありがとうございます！とっても嬉しい限りです(*´艸`*)読んで頂きありがとうございました* (2020年12月28日 21時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
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