ニセモノは……*59 ページ19
その字は少し震えてしまった。
自分で書いたその字を呆然と見てしまう。
………書きたくなかったのに書いてしまった。
それは仕方の無いことだけど自分の中で結論を出してしまった事が辛かった。
「A、書けた？」
うらたの言葉でハッとする。
周りを見るともう皆書き終わったようで私が一番遅かったみたいだ。
「……うん、ごめん」
二つに折りたたんでそっとうらたに渡す。
うらたはそれを無言で受け取った。
うらたの手には五つの紙。
「俺が代表して読み上げていい？」
読み上げるのか。
そう思ってしまったけどニセモノを決めるために、そして皆の決断を知るためには必要だと感じる。
うらたは私たちの頷きを見て少し息を吐いてから一枚目の紙を開く。
「まず、俺から」
うらたはチラリと私の左側を見た。
そして目を少し伏せて、口を開く。
「俺が書いたのは………センラ」
私の左隣。
金髪の髪が揺れたのを視界の端で捉える。
予想はついていた。
もともとうらたから志麻とセンラを怪しく思っているのは聞いていた。
だから2人のどちらかの名前を書くのだろうと思ってはいた。
うらたがもう一度センラの方を見る。
小さく『ごめん』と唇が動いた。
けれどそれは一瞬の事で、すぐにうらたは私たちに向き直る。
そして二枚目の紙を開いた。
「次、志麻くん」
斜め前の紫の頭を見る。
ピアスがチャリ、という音を鳴らして小さく揺れる。
「志麻くんが入れたのは……俺、うらた」
うらたが視線だけチラリと志麻の方を見る。
志麻の後ろ姿から何を考えているかなんてわかるはずがない。
うらたは三枚目の紙を開いた。
「坂田が入れたのは……志麻」
右隣に座る赤髪の彼。
机の上に置かれたその手がギュッと拳を握る。
「Aが入れたのは、センラ」
思わず「ごめん」と呟いた。
左隣を見れない。
膝の上でぎゅっと拳を握る。
うらたが最後の紙を開いた。
今のところうらた、志麻が1票。センラが2票。
センラがうらたか志麻に票を入れていたら決選投票となる。
一体、誰の名前を書いたんだろう。
そう思ってうらたを見ると紙を見つめたまま固まっていた。
そしてそのままセンラの方を見て、「お前……」と唇を震わす。翠の目が、揺らぐ。
「……ほんま、ごめん」
うらたがセンラの声と共にその紙を私たちの方に向ける。
それを目にした時思わず息を飲んだ。
「………決められへんかった」
その紙は白紙。何も書かれていなかったのだ。
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菊香(プロフ) - Reigaさん» 返信遅れて申し訳ございません（ ; ; ）初のホラーに挑戦してみたのでそう言っていただけると嬉しいです〜！読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (
レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 恋羽音さん» 返信遅れてしまい申し訳ございません（ ; ; ）たくさん考えて読んでくださり嬉しい限りです！個人的に頑張って考えたお話だったのでそう言っていただけるとありがたいです(^^)読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
Reiga - スッッッゴイコワカッタ、、、面白かったです (2021年5月25日 22時) (レス) id: de484b603d (このIDを非表示/違反報告)
恋羽音 - 今更ですが、最初から一気に読ませて頂きました。伏線の敷き方がとても上手で、とても面白い作品でした！途中、「urtさんか？…smさんかも…」と悩んでいたのですが、ラストに全てひっくり返されました！鏡の世界のニセモノ、ホンモノというのがとても良かったです！ (2021年3月30日 18時) (レス) id: 018cf43ff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - みほろさん» 半年遅れての返信本当に申し訳ございません（ ; ; ）たくさんの嬉しい言葉、ありがとうございます！とっても嬉しい限りです(*´艸`*)読んで頂きありがとうございました* (2020年12月28日 21時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
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