ニセモノは……*58 ページ18
その場に沈黙が訪れた。
うらたはそんな私たちを見渡し、紙とペンを一人一人に手渡す。
その行動に驚いて、思わず渡された時にうらたの顔を見てしまった。
うらたは寂しそうな顔で苦笑する。
「挙手制とかだと挙げずらいだろうから」
いつの間に準備していたのか。
相変わらずのリーダーの準備の良さが有難い。
うらたは全員に紙とペンを渡し終わると「じゃあ、さ」と口を開いた。
「そこにニセモノだと思うやつの名前を書いてほしい。それで1番多かったやつの名前をここに書く。このやり方で、いい？」
反論など出る筈がなかった。
私たちはうらたの言葉に肯定の意味で頷き、それぞれが紙に向かい合う。
真っ白な紙をひたすら見つめる。見つめたところで答えなど出てくるはずがない。
本当は書かないで終わりたい。
けれど周りから聞こえるペンの書く音がそうさせてはくれない。
皆、誰を書いているんだろう。
私だったり、するんだろうか。
( ……やめよ、 )
そんなところにまで想像を膨らませてしまったら自分の紙を埋めることがずっと出来ないままだ。
改めて紙に向き直る。震える手で黒ボールペンを持った。
うらた。
うらたはこの世界に来ても私たちのリーダー的存在として引っ張ってきてくれた。
そして、私の事を信じるとも言ってくれた。
私はそんな彼の名前を書こうとは思わない。
疑う理由がどこを探しても見つからないのだ。
志麻。
志麻は私の精神面の不安定さに気づき、少しでも和らげようとしてくれた。
その優しさがすごく心に染みたのを覚えている。そして彼は『突き落としてなどいない』と言ってくれた。
この言葉に嘘はないだろう。
私はそんな彼の名前もこの紙に書こうという気はない。
坂田。
ここに来てからもずっと優しくしてくれて、私にずっと寄り添ってくれた。
告白もされた。ずっと一緒にいるとも言ってくれた。
私はその言葉がすごく嬉しかったんだ。
そしてそれが信頼へと変わっている。彼の事を心から信じたい。
紙に名前を書く気はない。
そこまで考えて、すぅっと息を吸った。
手が震える。本当は疑いたくないんだ。この紙に名前を書きたくもない。
けれど、彼しか疑う理由が見つからない。
昨日の涙が嘘とは思えないけれど、それ以上にあの出来事が引っかかる。
そっと自分の頭を触る。
痛みはもう既に無くなっているがそれ以上に今は胸が痛い。
私を突き落とした人物。
記憶は戻らないけれど、消去法で彼しか犯人が浮かんでこないのだ。
( ごめん、 )
センラ
その名前を私は紙に書いた。
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菊香(プロフ) - Reigaさん» 返信遅れて申し訳ございません（ ; ; ）初のホラーに挑戦してみたのでそう言っていただけると嬉しいです〜！読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (
レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 恋羽音さん» 返信遅れてしまい申し訳ございません（ ; ; ）たくさん考えて読んでくださり嬉しい限りです！個人的に頑張って考えたお話だったのでそう言っていただけるとありがたいです(^^)読んでいただきありがとうございました* (2021年6月14日 21時) (レス) id: eddd78d9f3 (このIDを非表示/違反報告)
Reiga - スッッッゴイコワカッタ、、、面白かったです (2021年5月25日 22時) (レス) id: de484b603d (このIDを非表示/違反報告)
恋羽音 - 今更ですが、最初から一気に読ませて頂きました。伏線の敷き方がとても上手で、とても面白い作品でした！途中、「urtさんか？…smさんかも…」と悩んでいたのですが、ラストに全てひっくり返されました！鏡の世界のニセモノ、ホンモノというのがとても良かったです！ (2021年3月30日 18時) (レス) id: 018cf43ff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - みほろさん» 半年遅れての返信本当に申し訳ございません（ ; ; ）たくさんの嬉しい言葉、ありがとうございます！とっても嬉しい限りです(*´艸`*)読んで頂きありがとうございました* (2020年12月28日 21時) (レス) id: c2572f788b (このIDを非表示/違反報告)
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