昔、隣の席だった君。 2 【skt】

となり*54 ページ12

ワンマンライブで北海道に行った時の握手会。
その場所に、彼女はいた。



一瞬目が合った時、すぐには瀬川さんだとは思い出せなかった。
でも、どこかで見たことある顔だなと思っていた。




そして、彼女の順番になったときさっきよりも近い距離で彼女を見て思い出した。



『……瀬川、さん?』



思わず零れてしまった言葉。
彼女は俺に気づいていなくて、驚いたような表情をしていたけれど。


久々に見た彼女の笑顔はやっぱり、俺の好きなあの笑顔と同じだった。



そしてそこから同窓会で再会し、2人で出かけることになり、今に至る。




「なんなんやろ……」


瀬川さんと出かけている時は素直に楽しかった。
彼女をもっと笑わせたい、楽しませたい とも思った。




けれど、これは友達としての感情なのか。それとも………





「声、聞きたいなぁ。」



今、うらさんに向けているであろうその声を無性に聞きたくなった。




電話をかけた理由なんて無い。
ただ声を聞きたかった。俺とだけの時間がほしかった。


ただ、それだけ。




「…もしもし、瀬川さん？」


『もしもし、久しぶりだね。』




久々に聞いた声に、何故だか緊張してしまう。


けれど、やっぱりうらさんと2人で出かけてたらしく。
楽しかった？ と聞けば 楽しかった と返ってきて。



その言葉を聞いてひどくむかついてしまう。




自分から切った電話。スマホをテーブルに置き、体育座りをして膝に顔を埋める。



瀬川さんが楽しかったのなら、良かったじゃん。
声だって明るかったし、きっとうらさんも楽しかったのだから良い事だよ。



なのに、なんで、こんなにも俺は素直に受け止める事が出来ないでいるのだろうか。

となり*55→←となり*53

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す