3-1 (もしも、) ページ7
俺はたまにこう考える。
もしも、俺がこんな生活を強いられていなかったら。
この家の息子じゃなかったら。
そう考え出したら止まらなくなって、空想から静かに目を逸らす。
「
美しきクリスを静かに見つめる。
「
こういうのは昔からやってきた。
言葉も、手の動かし方も、体に嫌というほど染み付いている。
その後の言葉も唱え続ける。
と、その時。聞こえてきた声。
「アーヤ、なんで、ここにいんだ!?」
若武の悲痛な叫びを聞いてハッとする。
立花…?
「呪いは、1番近くにいる女を殺せ、だぜっ!」
叫びのような上杉の声も聞こえる。
俺は今、クリスから目を離せない。
だから、今どんな状況なのかは耳でしか把握が出来ない。
でも、上杉の声で気づいた。
まさか、立花がクリスの標的に…
他の皆の叫びのような声も耳に入ってくる。
一体、どうすれば。
今、呪文を唱えているので動くことはできない。
…どうか立花に被害が及びませんように。
そう願い、俺は叫ぶ。
「
どうか、クリスが叩き落ちますように。
立花の悲鳴が聞こえた。
俺は咄嗟に立花の方を向く。
それと、同時だった。
KAITO王子と呼ばれる高宮さんが、立花を抱きかかえ必死にクリスから庇おうとする姿を見たのは。
美しい微笑みを浮かべながら立花を胸の中で抱きかかえる高宮さんと立花はまるで、中世の騎士と姫のように見えた。
それと同時に、自分の無力さを感じる。
もし、自分が七鬼家の家系ではなかったら。
こんな言葉の唱え方などからも一切無縁だったなら。
この手で、この体で、立花を抱きかかえ助けてあげれたのに。
高宮さんと立花の様子を見ると、そう思えてくる。
それ以前に、他の誰かに抱きかかえられる姿を見たくなかった。
____こう思うようになったのはいつからだろうか。
「間一髪でクリスを叩き落した七鬼君のパワーに敬服だな。」
叩き落せたの、か。
最低限自分のやるべきことを成し遂げれたと知り、ホッとする。
チラリと高宮さんの隣にいる立花に目を向ける。
ちょうど目が合って微笑んだ立花。
その姿はあまりにも綺麗で、胸が苦しくなった。
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Koko - 忍目線の話って少ないので嬉しいです!(私の推しキャラは忍なのです) (2018年12月8日 22時) (レス) id: ed9673c0fd (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - チョコ♪さん» チョコ♪さん、ここにもコメント…ありがとうございます!!更新、のんびりと頑張ります(^^) (2017年7月25日 20時) (レス) id: aea442a5e9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ♪ - すごく面白かったです!更新頑張ってくださいね♪ (2017年7月22日 9時) (レス) id: 05bb390022 (このIDを非表示/違反報告)
菊香(プロフ) - 紗奈さん» うみちゃん!久しぶりだね(^^)切なさを表したかったお話だったからそう言われてホッとした…笑 とっても嬉しいです!ありがとう。こちらこそ読んでくれてありがとう! (2017年6月30日 21時) (レス) id: 52fa666800 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈(プロフ) - お久しぶり! 元 うみなです^ ^ うんうん、やっぱり菊ちゃんの作品は素晴らしいね! 上杉君たちが大人になって、まだ眠っていた恋心が動き出す感じ。さらに、その恋心を封じて応援する切ない思い!! もうっ!きゅうって胸が苦しくなりました。素敵なお話 ありがとう! (2017年6月30日 13時) (レス) id: f9da42b55a (このIDを非表示/違反報告)
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