昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ26)

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となり*26 ページ26

「どこか入る？」

周りをぐるっと見渡して聞くと、さかたんからの返答は無い。
あれ？と思い、さかたんの方を向く。

見ると、うーんと唸っている様子だった。

「ど、どうしたの？」

そう聞くと、さかたんは首をコテンッと少し傾けて眉を寄せる。
その仕草でさえも可愛いと思ってしまう私。

「なんか、瀬川さんいつもと雰囲気ちゃうね。」

さかたんにそう言われて、心の中で小さくガッツポーズをする。
いつもは櫛でとかすだけのセミロングの髪を、今日は横で編みこみをして赤いリボンをつけているのだ。
そして、普段はあまりしていないメイクも今日は気合を入れて頑張った。

その努力が実を結んだのか……そう思い、嬉しくなる。

「髪、編みこんでるからかな。」

私の言葉に、納得した様子のさかたん。

「そっかぁ、すごく似合ってるよ。可愛い。」

彼があまりにもサラッと言うから、思わず聞き逃しそうになった。
待て、今可愛いって言った？

「え、可愛い？」

思わず聞き返してしまい、その瞬間後悔する。
なんで聞き返した私!聞き間違いだったら恥ずかしいどころの話ではない。

聞き間違いじゃないことを祈りながらさかたんを見る。

「え、待って俺、今、可愛いって言ってた？」

ほら!!だから後悔したのに!!
穴があったら入りたい。
いや、今すぐ穴を掘って自分で埋まりに行きたい。

「マジか…。」

そう呟いて、口元を手で隠すさかたん。
でも、その時ん？と思う。

あれ、さかたん顔こんなに赤かったっけ。

鼻は赤かったけれど、顔全体が赤いとは思っていなかった。

「…俺、心の声漏れてたんか……。」

「………へ？」

さかたんが自分の髪をくしゃっとする。

「まさか声に出てるとは思ってなかった。
うん、可愛いよ。」

………私、今まで生きてきて良かった。
心からそう思ってしまう。

「ありがと、嬉しい。」

にやけてしまう口元をマフラーで隠す。

「ここじゃ寒いし、どっか入る？」

なんだかこの空気が恥ずかしくなって、話題を変えてしまう私。

「んー、そうやなぁ…。あそこ入る？」

テクテクと何事も無かったかのように歩くさかたんの後ろをついて行きながら、マフラーをキュッときつくする。

今だけは、にやけてしまうことを許して。