昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ11)

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となり*11 ページ11

手鏡を開けようとしたその時、その部屋に音楽が流れ始める。
それはさかたんの[彗星ハネムーン]で、ナユタン星人さん特有の中毒性のあるメロディが部屋中に響き渡った。
そろそろなのだろうか。

……もう鏡をチェックする気もなくなってしまった。

その歌の最初の掛け声が流れた瞬間、ドアの開く音がした。
ビクッとなりながら、ドアの方を見る。

そこには、さっきまでステージの上に立っていたさかたんがいて。
ライブ中の服ではなく、ラフな半袖姿になっている。

少し赤のメッシュが入った髪は、汗で毛先が少し濡れていて、
ライブでは見えなかった細かい所まで見えてしまって。

………って何だ私。変態か。

「きゃああああ!!!」

と悲鳴が上がる。

けれど私は何も言えなかった。
それは、女子らしい悲鳴が出来ないからというわけではない。

目の前にいる彼のクリッとした少したれ目がちな瞳から目が離せなくなって。
自意識過剰かもしれないけれど、さかたんと目が合ったような気がしたというのも理由になる。

けれど、目はすぐに私ではなく私以外の皆に向けられていた。

「ここにいるのは運のいい人だけやな～。
今日は皆ライブに来てくれてありがとうな!!」

そう言ってさかたんはニコッと笑う。
またしても悲鳴が上がるのを聞きながら、胸の鼓動が確かに早くなるのを感じた。

「あ、先に言っておくけど俺汗臭いかもしれないからそこは気にしたらあかんよ!」

その言葉に笑ってしまう。
そしてまた、さかたんと目が合ったような気がして。
ドクンッと一際大きく胸が鳴った。

……ダメだ。しっかりしろ私。自意識過剰にもほどがある。
10人の中の一人なんだから、ライブなんかよりも目が合う確率が高いのは仕方がない。
他の人も目が合っているはずだ。私だけっていうわけじゃない。