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「何度も何度も同じ事言わせないで下さい。……やります」
ようやく冷静になったAは敬語をまた口にした。
今更ながら、話している相手がこれから働く事務所の社長だと思い出したのだ。
彼女の凛とした声に早乙女は深く頷くと、一枚の紙と封筒を渡した。
「では、この紙を見ながらその建物に行っちゃってくだサーーイ!!」
Aはその二つを受け取ると、紙を見る。
手書きの地図でいまいち分からなかったが、赤丸のついている所に
行けばよいことは察しがついた。
「こっちは?」
彼女は封筒を軽く持ち上げながら早乙女を見る。
「それはその建物にいる、リュウヤさんにわたしてくだサーイ!
ユーの部屋の手配書なんかが入っていマース」
その回答に軽く頷くと、Aは早乙女に礼をした。
「今日から、お世話になります」
その後、荷物をまとめたAは、すぐに紙に記された場所に向かった。途中タクシーを使いながら順調に進んでいったのだが。
「森……?」
辺りに建物は無くなり、木々が生い茂った細い道に入ったのだ。
タクシーの運転手にこれ以上はいけないと言われ、
料金を置いて車から降りると。
まだ高い日の光でさえ、しっかりと届かない、舗装もされていない道が目に入る。
どうなってるんだろう……。
Aは必死に考えた。
進むべき方向はくねりと曲がっており、先が見えない。
元来た道は遠くに小さなビルが見え隠れしている。
Aははあっとため息をついた。
一体、どこに向かっているのか。
それが分からなくても、そこを目指しているのは何のためか。
心を決めた彼女は、ぱっと顔をあげた。
「行こう」
歩き出してすぐ、辺りが本当に木々のみになってしまった。
あくまでも冷静をたもっていたAでさえ、人が住んでいるのか不安になった、その時。
大きな木と高い草で覆われて見えなかった部分が明らかになった。
あったのは、個人のものとは思えないほど大きく立派な建物。
Aは、しばらくその迫力に圧倒されていたが、早乙女の
『ユーの部屋の手配書なんかが入っていマーース』
という言葉を思いだし、ここが寮かマンション的なものだと理解する。
なら、今から会いに行く “ QUARTET NIGHT ” はここで生活しているのだろうか。
Aはそんなコトを考えて、また歩き出した。
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十六夜星夜(プロフ) - 言音さん» ありがとうございます! 今直しました。 (2015年10月28日 21時) (レス) id: 03b61e41c3 (このIDを非表示/違反報告)
言音(プロフ) - 続き楽しみにしています。あのー、すみません、32話ならなくてが、なりにくてになっているみたいです (2015年10月28日 21時) (携帯から) (レス) id: 2111e957d4 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜星夜(プロフ) - 言音さん» 登録ありがとうございます! 今直しました。確かにその方が違和感がありませんね。ご指摘ありがとうございました! (2015年10月3日 11時) (レス) id: 97a18e3294 (このIDを非表示/違反報告)
言音(プロフ) - お気に入り登録させていただきました。続き楽しみにしています。あのー、文章なのですが、うかがってありますではなく、うかがっていますの方がいいと思います。突然すみません… (2015年10月3日 11時) (携帯から) (レス) id: 2111e957d4 (このIDを非表示/違反報告)
なまけ(プロフ) - 十六夜星夜さん» うん!!頑張って!!更新楽しみにしてまーすd(´▽`) (2015年9月30日 20時) (レス) id: a890b1cbfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十六夜星夜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/indigo09261/
作成日時:2015年9月29日 20時