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___ピピピピッ、……ピピピピピッ
カチャッと音をたてて時計を止め、Aは目を覚ました。
時刻は5:00 前。
窓を見ても、外はまだ薄暗く太陽も低い。
Aはのろのろとベッドから起き上がると、自分の部屋を出て隣の部屋に向かった。
ドアを開ける。
しかし、そこには誰もいない。
生活感がまるで感じられない程綺麗に整えられたその部屋に、Aは足を踏み入れる。
「お兄ちゃん……」
無意識に吐き出された言葉だった。
彼女は、そっと口を開く。
呟くように、囁くように。
寝起きの掠れた声で歌い、そっと椅子に座った。
それから彼女はしばらくの間ぼんやりとして、机に飾ってある一枚の写真を見つめていた。
これが、彼女のいつもの朝。
それから少しして。
Aは、おもむろに立ち上がると、静かに一階に降りていった。
トーストの上にハム、目玉焼きを乗せると、静かに手を合わせる。
「いただきます」
机にパンくずが落ちないよう、丁寧に食べる。
彼女しかいないこの家に、サクサクというパンを食べる音が響く。
ピピピッ ピピピッ……
携帯に電話が来たようだった。
普段、家からあまり出てこない彼女はそう頻繁に携帯は使わない。
珍しい、と心の中で呟いてからAは、それを手にとる。
ディスプレイには『シャイニング早乙女』とあった。
シャイニング早乙女といえば、“愛故に”で爆発的な人気を誇り、
今でも“早乙女学園” “早乙女事務所” を経営している、有名人だ。
彼女は仕方無さそうに携帯の通話ボタンを押す。
どうでもよい人からなら無視できるのに、と思いながら。
「グッモーニン! Ms.如月、待っていましたー!!」
シャイニング早乙女の朝とは思えない声量が携帯から流れる。
Aは、その挨拶に顔をしかめつつ、
「人違いです。私は雷です」
とあくまでも冷静に、さらりと返した。
早乙女は、自身の予想していた彼女の反応と寸分違わず同じだったことに一人、小さく心の中で苦笑して改める。
「オーウ……。それは失礼しまシタ……。では、改めてMs.雷。
ユー、アイドルやっちゃいなヨ!」
「丁重にお断りさせていただきます」
実は、このやり取りはもう何十回と繰り広げられていた。
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十六夜星夜(プロフ) - 言音さん» ありがとうございます! 今直しました。 (2015年10月28日 21時) (レス) id: 03b61e41c3 (このIDを非表示/違反報告)
言音(プロフ) - 続き楽しみにしています。あのー、すみません、32話ならなくてが、なりにくてになっているみたいです (2015年10月28日 21時) (携帯から) (レス) id: 2111e957d4 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜星夜(プロフ) - 言音さん» 登録ありがとうございます! 今直しました。確かにその方が違和感がありませんね。ご指摘ありがとうございました! (2015年10月3日 11時) (レス) id: 97a18e3294 (このIDを非表示/違反報告)
言音(プロフ) - お気に入り登録させていただきました。続き楽しみにしています。あのー、文章なのですが、うかがってありますではなく、うかがっていますの方がいいと思います。突然すみません… (2015年10月3日 11時) (携帯から) (レス) id: 2111e957d4 (このIDを非表示/違反報告)
なまけ(プロフ) - 十六夜星夜さん» うん!!頑張って!!更新楽しみにしてまーすd(´▽`) (2015年9月30日 20時) (レス) id: a890b1cbfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十六夜星夜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/indigo09261/
作成日時:2015年9月29日 20時