一話《私の唯一》 ページ1
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春、平凡で影の薄い私に似合わず、氷帝学園に入学する。親の反対もなく、スムーズに入学出来た。
多分、私に関心が無いだけなんだろうけど、__
それでも、嬉しかった。
氷帝学園は、推測でしか無いけど目立つ人が沢山いるだろう。それなら、尚更私は影が薄くなる。__人に、絡まられずに済む。
それが、目的だった。
とは、言い難い。それだけなら何校も周りにある。
でも、その中でも氷帝に決めたのは榊先生がいるからだった。小学生の頃から何かとお世話になってきたピアノの先生。
だから、縁もあって此処に決めた。
普段は表情を表に出さない先生も、氷帝に入学すると言った時はちょっとだけ嬉しそうな顔をしてくれた。__多分。
そして、入学式を終えようとしていた。
後は新入生代表の挨拶のみ。
それを終えたらクラスに行って即刻帰ろう、そう決めていたけど…
「…よく聞け、」
壇上に立ったのは、無神経な王様だった。
私の影の薄い学園生活、その手助けをしてくれそうな目立つ人が、そこにはいた。
感謝を心の中で。
そう思った途端、
「…ん、ぐーがー」
「…え?」
慌てて口を塞ぐ。
声を出してしまった原因は、隣の席の男の子。
金髪の癖毛が可愛らしく、小動物みたいな男の子。
それが寄っかかってきたのだ。
…でも、
寝ていた。爆睡だ。
そして、更に一瞬。
あの壇上に立っている男の子が此方を見たような気がした。背筋が冷えるも、目を逸らし、男の子を元の体勢に戻す。
私はその後、何も無かったかのように壇上の男の子を話を聞いていた。
六割は、何を言っているか分からなかったけど。
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作者名:いな | 作成日時:2021年5月15日 19時