【文スト】疑問符【太宰治】

疑問２２ ページ24

「ふーん…
で、その情報提供者が彼と｡」


丁度帰って来た乱歩さんにこれからの事を説明｡
駄菓子屋に行っていたらしい｡


「ええ
報酬として、事件解決までの護衛を頼まれました」

犯人が近付いて来たら捕えられるし
民間人の保護も出来る
一石二鳥だ｡


事件に漸く終止符が打てそうで嬉しい反面不安が募る｡

加賀さんへの危険(リスク)が大きい｡
探偵社で保護した方が善いのでは無いか｡

…本人が護衛を申し込んでいるのだから気にしなくて善いのだけれど｡


乱歩さんは訝しげに彼を見つめていた｡



「じゃあ暫く出社しないの？」

遠くから口を開いた太宰さんに視線を向ける｡

質問したのに、愛読本から目を離す気はなさそうだった｡


「あ、いえ…
敦くんと交代制ですし
時々来て机仕事を片付ける心算です」

「そう」

「…すみません」


興味無さ気に呟く太宰さんに一応謝罪｡

屹度顔を見なくて済む可能性に期待したのだろう｡
仕事だから仕方ないけど｡


「…まあ、私の仕事増えるより善いか」

なんて云って太宰さんは本を閉じた｡

興味が失せたらしい｡


嗚呼私はまだ使える(・・・)ンだな
善かった｡


安心した筈なのに、心臓を縛られる感覚が消えないのは何故？




「ねえ、Aと彼は何処で出会ったの？」


何かを考える様に顎に手を当てる乱歩さん｡

この人の考える事は私には解らない｡

手に持つ棒付飴に加賀さんの笑みが歪んで映った｡



「彼が働いている商店街ですね
今朝落とした手巾(ハンケチ)を拾って貰って…」

何か不審な点でも？
と問えば､
それ見せて
と真剣な声色で返された｡


「えっと……これですね」

「…A

彼には近付かない方が善い」

飴玉が乱歩さんの口内で砕ける｡


加賀さんは愉しそうに笑みを浮かべていた｡

.



加賀乙彦

小説家 精神科医
1973年 谷崎潤一郎賞受賞
精神医学や犯罪心理学の研究、実践を踏まえて生の根源的な問題を追及する｡

ご存命ですよ!!

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