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疑問15 ページ17

もう一度目を開けた時、そこに兄さんは居なかった。

夢が現実に、なんて有得ないけど
少しだけ期待していた自分が居た。

何故か置かれていたおじやを口に含む。
少しだけ温かかった。


時計に目をやると午前を指していた。
どうやら一日中眠っていたらしい。

妙に深い夢だったから仕方無いか…。
二重の夢なんてなかなか珍しいと思う。

唯、出勤の目標が達成出来なかった事が一寸悔しかった。



体温は37.0まで下がっていた。
これなら仕事に出ても大丈夫。

鍵をかけて、少し遅めの出勤。
傘があってどうもまどろっこしかった。




雨だからか街中は普段より賑わってない。

活気の無い商店街を横目に歩く。



「あの、すみません」

「え…?あ、私?」

黒い傘の中から顔を覗かせる青年は小さく肯いた。


否、誰だ?
茶のメッシュが入った金髪の知り合いなんて居ない筈。

青年は私の疑問を取り払う様に笑った。

「いえ知人と云う訳では無いのですよ
俺は落し物を届けに来ただけです」

「あ、ああ…。どうも…」

左手に包まれたそれは確かに私のハンケチ。

そっと渡されたそれに一抹の不信感。
何か違和感が拭えなかった。


「先日大雨に濡れてましたよね?
大丈夫でしたか?」

「…見てたんですか」

「ええ
あの雨の中傘も差さずに歩く人なんてそう居ませんから」

青年はさもおかしそうに笑った。

それもそうだ。
土砂降りの中雨宿りの選択をしないのは只の莫迦である。
まったく気が付きはしなかったが。

途端恥ずかしくなった。


「風邪を引いて寝込むかと思ったんですが…元気そうですね
一昨日よりずっと顔色もいい

何か善い夢でも見ました?(・・・・・・・・・・・・)

「そうですね…
夢が叶う素敵な夢をでした」

青年は嬉しそうに、満足そうに笑った。


よく笑う男だ。
第一印象はそれがぴたりとはまるだろう。

絶えず浮かべられた人懐っこい笑み。
その裏に一瞬得体の知れない恐怖が見えたのは私だけだろうか。

どうせ見間違いだろうけれど。
病み上がりは判断力も低下するのか。あゝ厭だ。



「ああ!すみません!!
出掛けるところだったんですよね!」

「いえ既に遅刻していたので」

「なら尚急がねば!!」

引き留めてしまって申し訳ない!
もう一度困った顔で小さく笑むと、その侭手を振ってくれた。



嵐のような男だ。

でも、悪い男ではないのだろう。


振り返れば未だ手を振ってくれている青年に笑ってしまった。





……処で、あの青年は怪我でもしていたのかな?

嗅ぎ慣れてしまった血の臭いに眉を寄せた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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mikuota - 布団で見ていてめっちゃ声も出ずに泣きました青の時代の初見時ぐらい泣きました。自分で言うのも何ですが,涙腺硬い方でして夢小説でこんな泣いたの久々でした。書籍化しないかな?とか思いました。追伸お身体に気をつけてお過ごしください。 mikuota (2023年3月29日 21時) (レス) @page49 id: 7a0513a200 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬 - 読みながらボロボロ泣いてしまいました。芥川しかり、誰かに認めてもらおうと無茶をする子が大好きです。間接的に兄のせいで死ぬならまたそれも良しみたいなスタンスが少し太宰さんに似ていて、兄妹感があって良かったです。ありがとうございましたm(_ _)m (2022年7月29日 21時) (レス) @page47 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - 屡亜さん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。兄弟がいない人にも楽しんでいただけるのは喜ばしいです!忙しさも落ち着いてきましたので、新作を考えています。案なら沢山あるんです (2020年10月17日 5時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - あずきさん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。本日エピローグを投稿させていただきました。今更更新しても、という気持ちがありましたが、コメント欄の大好きというたった一言で、書き上げる決心をしました。本当に有難う御座います。 (2020年10月17日 4時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
屡亜(プロフ) - とっても好きです! 私には兄弟がいないので読んでいて楽しいです。 忙しいとは思いますが、頑張ってください (2019年2月9日 16時) (レス) id: 42be0d16b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒いオルゴール | 作成日時:2017年8月22日 1時

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