泣きっ面を蜂に刺されてできた傷口に塩を塗る（３） ページ11
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『放送開始まであと30秒！』
その声が聞こえた瞬間、背中のあたりがぞわりとした。
もう少し遅かったらどうなっていたんだろう。
オープニングでRa*bitsのメンバー4人そろってローブを着て登場するのはおなじみの演出。
昔から変わらないこのコーナーが成立しなくなったとしたら…
そう思うと冷や汗が止まらない。
今回は結局間に合って事なきを得たからよかったけど。
私が間に合わせで作ったローブは仁兎くんの元にいったらしく、いの一番にローブを脱いで怪しまれることを避けたようだった。
「はぁ、よかった…」
小さく呟きながら肩をなでおろす。
大分落ち着いてきてずっとスタジオに居座り続けるのも気が引けるので誰にも気づかれないようにこっそりスタジオを後にする。
衣装室の片付けしなくちゃ…。
裁ちばさみもミシンも布もそのまま放ってきてしまっている。
片付けしたら今日はさっさと家に帰って休もう…
『あ！Aお姉さま！！！！！！』
…今日はもう面倒事は勘弁なんだけどな…。
片づけをして帰ろうと意気込んでいた私を呼び止めたのは、呼び方でお分かりの通り、Knightsの司くん。
「えぇっと…ご用件は…？」
司「急いでいるため、ご無礼の程、お許しください。私がAお姉さまを引き留めたのは、Leaderがリトル・ジョンと戯れていた時に衣装をどこかに落としてしまったようで、その代わりとなるものを急ごしらえの物でいいので作っていただきたいという件です。」
またか…
こうなるとトラブルというのは立て続けに起こるらしい。
やめやめ。こういうのって考えちゃうとフラグ立つんだから。
「それでタイムリミットは…？」
司「20分です。」
「……。」
今日はもうこんなギリギリの戦いしたくなかったのに…！
一緒に仕事をしているうちにどこかのデコ助さんに自らが面倒事に突っ込んでいく性格が似たのかしら…？
頼まれたのはジャケット。
よりにもよってKnightsの。
ここのユニットのジャケットはオーソドックスな形をしているけれど、騎士の高貴さや気高さを表現するためにかなり細かい凝った装飾が施されている。
そんな衣装を20分で同じクオリティーまで仕上げるのははっきり言って無理。
本当に無理。
となるとリメイク路線で考えた方がよさそう。
ESさん、今日は残業代弾んでもらいますよ…！絶対だからね！！！！
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作者名：小野屋 | 作成日時：2021年2月6日 18時
