新しく芽生えた夢(4) ページ39
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__________ふぅ、
緊張で早くなる心拍数を落ち着けるように短く息を吐く。
これから目の前のステージにRa*bitsが登壇する。
会場が大きくて気付かれにくいとはいえ、押し出されて気付いたら真ん中より前の方に来てしまっていた。
仁兎くんが気付きませんように。
ちーちゃんに合わせて服装を決めたとはいえ、Ra*bitsのイメージカラーは水色。瀬名くんのミルクブルーとほとんど変わらない。
気付かれたらやばい。
仁兎くんが私の姿を見たら私がRa*bitsのファンだということを察すると思う。
それだけは回避しないといけない。
もうフラれていはいるけど、これ以上距離を取られたらと思うとしんどい。
せめて友達には戻りたい。
そのためには絶対にバレちゃいけない。
「ね、後ろの方行かない…?」
チヒロ「うーん…入場規制かかってるっぽいから動くのは難しそうだね…途中で抜けるのも難しそう…」
近くにいるのは恐らくRa*bitsのファンだと思うから声のトーンをギリギリに抑えて会話をする。
やっぱりそうだよね…
そんなに身長は高くない方だから気付かれない…よね。
__________きゃああああああああ!
不安でぐるぐる考えてるうちにもう始まってしまう。
意を決してグッズのタオルを握りなおした。
なずな「みんなー!元気だったかー!」
創「お花の妖精と一緒に遊びましょう!」
光「衣装はに〜ちゃんの案なんだぜ!」
友也「今日はみんな一緒に楽しみましょうね!」
ぴょん、と一斉に登場する。
衣装は…お花の妖精をイメージにした羽のついたもの。
か…かわいい…。
でも、それと同時にステージに4人が並んでいる光景はものすごく遠く感じられた。
そりゃそうだ。一般人とアイドルもとい芸能人。
たまたま同じ大学だっただけでその間には大きな壁がある。
一緒にタルトを食べに行ったこと、一緒に学園祭を回ったこと、告白して振られたこと…全部が夢だったかのよう。
逆戻りするどころか本当に好きなのをやめられそう。
あんなに好きだったのにね。
でも、そんなことより今は舞台衣装への興味で頭がいっぱい。
帰ったらサークルの先輩たちに相談して特訓させてもらおう。
舞台衣装制作のアルバイトがあったら応募してみよう。
Ra*bits以外のユニットの衣装も色々調べてみよう。
舞台衣装を作りたい。
舞台でキラキラ輝くRa*bitsを、仁兎くんを見てそう決心した。
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作者名:小野屋 | 作成日時:2020年5月28日 17時