日常365 勝利 ページ9
_あぁ、負けた。
と素直に思った。恐らく、仄々が中王区の名を出した時点少女はただでは勝てないことを悟っていたのだ。
乙統女は脱力したように背もたれに体重をかけた。
画面の向こうでは悪戯に成功した子どものように笑う少女。
_その手には、国家機密に等しい闇が詰まっているというのに。
「それは、とても困りますね。」
乙統女にはそう答えるしかなかった。
_ただの一般人だと馬鹿にしていた。
それが、今回の中王区の敗因だろう。
「それは、とても困りますね。」
乙統女の声が響く。
「中王区の権威に関わりますもんね。貴方はこのレコーダーを野放しにすることは絶対に出来ない。」
「その通りです。」
「このレコーダーを渡す代わりに、私が勝利した際の3つの条件を守っていただきます。証人は、ここに来てくださっている無花果さん、私の父、乾龍琉警視監、そして、この場にいる全員です。勿論、書面は2枚準備して代表の無花果さん、私の父に1枚ずつ保管していいただきます。」
少女は2枚の契約書をちらりと見せる。
「その契約書の記入後にこちらのボイスレコーダーはお渡しします。」
数秒の沈黙の後_
「かしこまりました。」
乙統女は諦めたように、そう告げた。
少女からの条件は3つ。
1 少女の交友関係に干渉をしないこと
2 トム達が大切にしている難民キャンプへの支援をやめないこと
3 3を解放すること
「では、これを守っていただきます。もし、破ったら…わかってますね?」
少女のその声には、こちらにはまだ証拠があることが暗示されているそうな気がした。
乙統女はやはり口角が上がる。
「えぇ。肝に銘じておきましょう。条件は守ります。」
「感謝します。」
最後に、契約書に無花果と龍琉にサインしてもらい、龍琉が持っていたフィルムカメラで2つのフィルムを用いて写真を撮る。証明になるように無花果と龍琉本人にも入ってもらった写真も忘れずに。
1つのフィルムと契約書、そしてボイスレコーダーを受け取ると、中王区の党員は引いて行った。
最後に無花果がその場に残る。
「…すまなかった。私には何もできなかった。」
無花果のまさかの言葉に少女の目が見開かれる。
しかし、その後すぐに微笑んだ。
「互いに立場があります。譲れないものがあります。だから、これで良いんですよ。」
少女がそう言うと、無花果は一瞬だけ泣きそうに笑った。
「また、顔を出す。」
「お待ちしています。」
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時