人間洗浄機９

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「寂雷さん！一二三さん！独歩さん！」

麻天狼の座る席に近づいていくのは、ここのバイト生であり、彼らの友人である乾Aつまり少女だ。

「おや、Aさん？」

寂雷が驚いたように少女を見つめる。
どうやら、一二三と独歩も知らなかったらしく固まってしまっていた。

「ふふ、こんばんは。ここ＜ナポリ＞でバイトさせていただいているんですよ〜。偶然ですね。」

少女は、刺繍がされているエプロンを自慢げに見せるとニコリと笑う。
寂雷と一二三は状況理解が出来たようで、

「そうだったんですね。お邪魔しています。」
「君とここで出会えるなんて、まるで運命だね。愛しい人。」

寂雷は律義にお辞儀をして、一二三は少女の手を取ると、その甲に唇を軽く落とした。
何度されてもジゴロの対応に慣れない少女は少し耳を赤く染めている。

ちなみにその光景をバックで見ている安西と竜ケ崎はニヤニヤしていた。

しかし、独歩は震える指で少女を指すと

「じゃ、じゃあ、どんな悩みも明るく聞いてくれる人気の店員さんってもしかして…」

恐る恐る問いかける。
実は、寂雷が患者さんから聞いた情報を元に、独歩のリフレッシュも兼ねてその店員目当てで来たのだが、少女が出てくると納得だろう。

「え、…そんなシンジュクにまで噂になってる店員さんがウチにいるんですか？」

しかし、少女は本気で知らない様子を見せる。
その瞬間、麻天狼の３人は確信した。

＿あ、コイツが噂の店員だ。
と。
大当たりだ。

「あ、じゃあ副店長にその店員さんが今日居るか聞いてみますね。
ところで、ご注文はどうなさいますか？」

少女はそのまま注文の流れに持って行く。
ちゃっかりドリンクメニューを広げて見せた。

「あ、じゃあ…俺はビールで。」
「僕はスパークリングワインを。」

独歩と一二三はお決まりのように即決していくが…

「私は…どうしようかな。」

寂雷は楽しそうにカクテルメニューを見ている。
その瞬間、少女の脳裏にはフラッシュバックした。
『てやんでい！』
酔った寂雷の恐ろしさが。

「じゃ、寂雷さん、今日お車は？」

「あぁ、今日は電車で来たんですよ。」

おっと。ダメだ。
少女は必死に考えた。

「あ！私最近ノンアルコールの作り方を習得したんです！私作りますよ！」

「そうなのかい？それは気になるな…。じゃあそれをお願いしようかな。」

「「「ありがとうございます！！」」」

何故か、少女だけでなく一二三と独歩のお礼の言葉がナポリに響いた。

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