参拾伍 ※ ページ39
明日訓練に付き合ってほしいと言いにきたAを咄嗟に呼び止める。
「少し話さないか」
口では大丈夫、と言っていても顔から不安が読み取れる。虎杖のことで頭がいっぱいなんだろう。
ドアを開けて部屋に通す。よくよく考えたらまずいかもしれない。でも心配なだけで決して他意はない。
「なんか飲むか？」
『ううん、大丈夫』
ベッドを背もたれのようにして2人で座る。
「…虎杖のこと、ごめんな」
俺がもっと強ければ、もっと力があれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
『恵は悪くないよ、悠仁が悪いんだから』
次会ったら許してやんない、と冗談めかして微笑むA。無理してるのが伝わってくる。
「無理すんな。泣いていいから」
彼女の頭を撫でると、何かがプツンと切れたように彼女は涙を流した。きっと今までずっと我慢していたんだろう。
『……もうっ、あえないの、かなあっ』
私まだ何も悠仁に返せてないのに、と溢すA。
誰よりも長く虎杖と一緒に過ごしてきたであろう彼女の辛さは計り知れない。伏黒は静かに彼女を抱き寄せた。
どのくらい経っただろうか。
落ち着いたであろう彼女からゆっくり離れる。
「寝れそうか？」
『…今日は一緒にいてもいい？』
「ああ」
流石にこのまま帰すのも忍びない。疲れているであろうAをベッドで寝るよう促す。
『それはだめ。恵がベッド使って』
「ちゃんと横にいるから。な？」
両者とも一向に引き下がろうとせず平行線を辿る。先に終止符を打ったのはAだった。
『じゃあ一緒に寝よ』
いやそれはだめだろ。でもこのままだと埒があかない。そう悟った伏黒は渋々了承した。
電気を消して一緒にベッドに入る。おやすみ、と壁際を向いた。
『…ねえ恵、こっち向いて』
言われるがままにAの方を向く。彼女は俺に背中を向け、腕を取って自身の腰へ回す。所謂バックハグの状態だ。鼻先を掠めるシャンプーの香りに動揺を隠し切れない。
悠仁がよくこうしてくれてたんだ、と呟くように言う彼女にほんの少しの苛立ちを覚える。俺は虎杖じゃないのに。
『恵の匂いする…落ち着く…』
自身の腰へ回した俺の手を握ってそう呟くA。さっきまでの少しの苛立ちがあっと言う間に何処かへ飛んでいく。
安心したのか、いつの間にか寝息を立てるAにおやすみ、と少しだけ強く抱き締めた。
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いくら(プロフ) - さらさん» さら様、コメントありがとうございます！そう仰っていただけて嬉しいです…励みになります…！更新再開のために文章を書き直しているため、終わり次第つづきのお話アップしていきますね◎ (11月21日 10時) (
レス) id: 9fd3faeaa3 (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして！！このお話最高です！！今シーズン1から読ませて貰ってます！！恵くん、推しにはたまりません！！きゅんきゅんです！！続き楽しみにしてます！！更新頑張って下さいね！！ (11月21日 0時) (レス) id: f9b4a84be1 (このIDを非表示/違反報告)
いくら(プロフ) - ラブカですこんにちはさん» コメントありがとうございます。正解です◎お分かりいただけて嬉しいです…！ (2022年3月3日 3時) (レス) id: 71d8b0023a (このIDを非表示/違反報告)
ラブカですこんにちは - あの映画鑑賞の映画ってもしかしてLEONですか？ (2022年2月9日 14時) (レス) @page32 id: cc346bfde8 (このIDを非表示/違反報告)
いくら(プロフ) - 雫様、コメントありがとうございます！オチはまだ未定です！まだまだ続く予定なので、引き続きご覧頂けたら嬉しいです◎ (2021年4月9日 15時) (レス) id: 71d8b0023a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いくら | 作成日時：2021年3月22日 11時
