へいさねみん【不死川実弥】

告白 ページ11

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｢見てたよ、ちゃんと｣
｢…嘘つけェ｣
｢ほんとだって｣

　ちゃんと君を1人の"男の子"として見てたつもりだった。でもそんな中君を保護者だなんて言い張って甘えてきたのは紛れもない自分。ずっと隣に居て欲しい事に名前が必要だなんて思ってもいなかったから。この関係に満足していたから。
　でも気付いたんだ。気付いてしまったんだ。気付かないフリを今までしてた事に気付いたんだ。
　甘露寺さんの言葉を聞いて確信した。保護者だと思っていた彼の存在は、いつの間にか私の知らないうちに大きくなっていたらしい。
　じゃあ、この関係に名前を付けるとしたら。ちゃんとした名前を付けるとしたら。

｢なァ、A｣
｢…何？｣

　彼が私の両頬を優しく包み込むように触る。どこまでも彼は優しいんだ。ぶっきらぼうな見た目だけど、私だけは知っている。
　惚れ薬を飲んでないのに、心臓の音が大きくなっていく。ドクン、ドクンと鼓動が段々と早くなっていき、全身の熱が顔に一点集中し始める。しかしこの感覚はどうしても不快にならない。なんなら今はそれでさえ愛おしく感じてしまう。



｢────保護者の立ち位置、終わらせてもいいかァ｣



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｢…いいの？さねみん｣

　小さな声で、そう呟いた。少しその声は震えていた気がする。


｢階段登るの…遅過ぎてイライラさせるよ｣
｢高3なのに、1限目から寝ちゃうし｣
｢お昼ご飯とか…変なパン買っちゃうよ｣
｢何なら、眠過ぎて昼抜く事も多々あるし｣
｢体育だって目離した隙に脱走する｣
｢おつかいもロクに出来ないし…、｣
｢映画も多分寝るし、傘だってささない時ある｣
｢勉強だって…数学教えて貰わないと出来ない｣


｢────さねみんが面倒見てくれないと、私｣

　ダラダラとした言葉が続くのを、彼はちゃんと最後までしっかり聞いてくれた。いつもならイライラして声を荒らげて怒るのに、私の両頬を優しく触ったままずっと待っていてくれた。その目はとても優しかった。


｢覚えてねェなら、何度でも言ってやる｣
｢え、？｣
｢この世界でお前の面倒見れる男は…どこ探しても俺しか居ねェんだよ｣
｢…さね、み｣


　ギュッと私の頬を掴んで、私と彼の距離は段々と近付く。ああ、この距離は2度目だ。でも前とは違う。



｢好きだ、A｣


　──────うん、私も。


　お互いの気持ちを認め合った最初のキスは、とても優しくて、柔らかくて、あったかかった。


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