甘々 ページ12
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「へいたくしー」
朝一番に聞こえる、眠たげな声。そんな声を聞くのは久しぶりで、いつもならイライラしながら無理矢理持ち上げるのだが、今日の俺は少し機嫌が良いようだ。
「今日のタクシーは、…コイツでどうだァ」
そう言って、差し出すのは俺の手。いつもは片手で担ぎ階段を駆け上がるが今日は一味違っていた。眠そうなAの目付きが、少し見開くのを俺は見逃さなかった。暫く沈黙が続いたが、彼女は少し口角を上げて俺の手を握った。
「……たまには、悪くないかもね」
なんて言いながら。
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「その様子じゃ派手に仲直りしたようだな」
「派手にこの様子を見て助けようと思わないのかい」
「ははは!この1週間お前派手に数学してなかったもんなぁ」
「なんでバレてるんだよ」
手を繋いで登校だなんて、恋人らしくてキャッキャウフフってなっていたのに。さっきまではいい感じの雰囲気だったのに。
「この問題も出来ねェのに××大学受けるとは随分と余裕こいてるなァ、A」
「あれ?全然甘々じゃないむしろ辛々」
教室に到着して早々、ドキドキの恋人ライフ(死語)は瞬く間に強制終了してしまった。席に着いた途端開かれるのは数学の参考書。
そうだ、私達受験生だった〜、うふふ。
────いやなんも笑えんがな。
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「ほらよ」
「…これは」
彼氏彼女の関係になって初の下校時。彼は私にとあるものをプレゼントしてくれた。え?そんなプレゼントなんて、と照れる所かもしれない。いや普通は何か…ねぇ、その、そういう可愛いものとかくれると思ったんだけども。
「ん、赤本」
「ですよね」
わー分厚い。真っ赤な
ちょっと待って夢のカレカノライフ(死語)とは。
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「あ、お姉ちゃんやっと赤本買ったんだ」
「やっとって…遅いのかな」
「もう11月終わるんだよ?」
「ぴえんじゃん」
そうか、確かにもう受験はすぐそこまで迫っていたんだ。カレカノライフ(死語)とか甘々〜とかそんな事してる場合じゃないじゃん。リビングの壁に飾ってあるカレンダーに目をやると、明後日はさねみんの誕生日である事に気付いた。
「誕生日?ンなもん祝ってる暇があんなら勉強しろォ」
「え、いや放課後とか」
「放課後ォ?一緒に勉強してェのかァ?」
「なんでもないです」
今日した辛辣な言葉が脳内でリピートされた。
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ポンコツ(プロフ) - すっごいドンピシャに好きな作品でした!! (2022年11月8日 18時) (レス) @page45 id: 16f55af0f9 (このIDを非表示/違反報告)
澪奈(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!!次回作も楽しみにしています! (2021年3月9日 21時) (レス) id: 20f17d6d24 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - さねみんなら、一生お世話されたい!!楽しい作品だったぜィ(^^) (2021年3月9日 21時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 完結おめでとう!!とにかく可愛らしくて勝手に2人の保護者面して見守っておりました…。ゆっくりと2人のペースで進んでる姿が本当に見えてきてこの先も笑い合っていくんだなって思うと本当に素敵な2人!最高なお話をありがとう!次回作もゆっくり頑張ってね!!! (2021年3月9日 20時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - もしゃこうさん» コメントありがとうございます!この作品を最後まで読んでくださり本当に嬉しいです、、!次回作も見てくださるんですか!?ええ嬉しい涙ありがとうございました、! (2021年3月9日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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