新・二年И組!!〜常人じゃないですが何か?〜

＊第七十二話＊〜男の正体〜 ページ32

親殺しのパラドックス。

俺をここで殺したって意味はない。

というか、俺を殺そうと思うこと自体、無意味なのだ。

俺の名は




　 形無 鏡一(ｶﾀﾅｼ ｷｮｳｲﾁ)

――そして、愛すべき見境Aの半身。


親殺しのパラドックス。

確かに、過去の世界で親を殺そうが、自分を殺そうが、未来への影響はない。

しかし、そこにひずみが発生してしまうのは確かなのである。

親を殺してしまえば、親が産まれてきたという事実を消されるし、自分を殺してしまえば、自分の代わりに誰かが産まれてきてくれることだろう。

そう。過去を変えてしまえば、その代償として、自分の存在を言いように変えられてしまうのだ。

だから、自分の存在を保証した上で未来を変えるというのは、決してできるようなものではない。



だが、慎はどうなのだろうか。

何度も過去へ戻っているのに、なぜ、未来への影響はないのだろうか。

それは、


俺が慎によるタイムスリップのひずみの正体だからだ。

小さいころから慎は、無自覚にタイムスリップをしていた。それが夢の中だと信じて。

しかし、それは夢などではなかったのだ。

それは、紛れもない現実であり、本当の過去だったからだ。



そして俺は産まれた。

慎によるタイムスリップのひずみから未来を守るために。






――見境Aの手によって。


そして、今日も俺は未来を守る。

慎の影として、反対の存在として。

たとえ、それが、未来を傷つけてしまう形であったとしても。

＊第七十三話＊〜読めない意図、絡まってゆく糸〜→←第七十一話*〜探し中〜

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