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【港船着場】

磯の香りが漂う港に、大きな船が停留していた。

外交が解禁になった今、
どうやらこの船は国外へと向かう船らしい。

綺羅びやかな格好をした富裕層達が乗り込んでいく。

そこには似合わない男の背に語りかける。


『よお、挨拶もナシにトンズラか?』

短髪で片目を失った男は
俺の声に驚きの表情を見せたがすぐに笑みを浮かべる。


「まさか俺を斬りにきたのか?」

『いや、見送りに来ただけだ。
どうせまた戻ってくるだろ?俺と玉を斬りに。』

俺の言葉に蘭は目を細める。


「また斬りに来るって分かってて送り出すとは
‥‥‥おかしな奴だな。
岸に放置しといた裕太は無事に生きてるのか。」

『京の者が介抱してくれた。』

蘭はフッと笑う。

「強運な奴だ。……俺は外国でたんまり銭を稼いでくる。
一生分稼いだら
暇つぶしにお前らをまた斬りに帰ってくるよ。」

『その頃にはもう刀はないよ。平和な世界だ。』

「違いねえ。外国はどのくらい進んでるか、
この日ノ本がどれだけ遅れてるか
この目に焼きつけてから死にてえからな。」


乗り場に足を進める蘭を言葉通り見送る。



「‥‥またな、宏光。」



蘭とまた再会するのは、それから7年後の話。

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作者名:いっぽちゃん | 作成日時:2023年4月13日 20時

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