✿大奥に咲く七輪の華✿ (ページ28)

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「本当にコイツがあの豪族武家の坊ちゃまなのか？」

「あぁ、間違いない。」

「じゃあコイツを人質に千賀家から大銭を強請れば……」

「大銭が手に入る。
千賀家なら腐る程銭は持ってるだろうからな」

男達の下品な笑い声で目を覚ます。

またか……。

俺は昔からよく銭目当てで連れ去られた。

この年になって、

大奥で剣術を鍛えたのにこのザマだ。

強く‥‥なりたいのに。

茂みに引き摺られそうになった時‥‥‥

「千賀！！！」

その呼び声にハッとする。

『……横尾さん。』

ハァ、ハァと短い息を吐く横尾さん。

急いで追ってきてくれたのだ。

さっきまで斬り合いをしていたからか、

かなり疲れているように見える。

男達に向けている真剣の刃も刃こぼれをしている。

『横尾さん！ダメだ！！
刃先が刃こぼれしてる！
その刀じゃこの人数は相手にできないよ！』

俺の言葉に横尾さんが微笑む。

「俺だって元は大奥別当まで上り詰めた男だ。
太輔やミツよりかは劣るが剣術はできるよ。
千賀、お前足捻ってるだろ？そこで座ってな。」

横尾さんの背中が一段と大きく見えた。