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どうやら急に増えた"おもちゃ"のために、道具を取ってこなければいけなくなったらしい。女は俺達を置いて部屋から出て行った。
あと出る時に気配が扉の鍵を覗き込んでたの草の呼吸なんだよなあ。多分それ二度と使えないぞ。
女の気配が遠くに行ったのを確認して、俺は口を開いた。
「よ、少年。起きてるんだろ?」
「……てめえもか」
小声で言った彼に俺は苦笑した。やっぱり、気絶した振りか。
呼吸が不規則で意識はあるはずだから変だと思ったんだよなあ。俺は肩を竦めた。
「流石に見え見えだったからねえ。少年がその状態だったから、倒れてみたけど……騙されてくれてよかったよかった。君こそ気絶の振り上手くね?」
彼は身体を仰向けにして、こちらを見上げて鼻を鳴らした。
「どうせ動けねえならせめて油断は誘いたかったからな。足は動くから蹴りでも何でも入れて逃げようと思ってた」
「おおう……」
やっぱりとてもしたたか。
「つーか、何でお前ここに……」
「あーはいはい、それは後で。どうする? 一応俺は縛られてないから君を連れて逃げられるけど」
少年はぱちぱちと瞬きをしてから、体を起き上がらせた。それからにいと口端を吊り上げさせる。
「冗談。こんな格好のチャンス逃すか。録音でも何でもしてあいつの人生転落させてやる」
明智少年が顎で自分の荷物がある場所をしゃくる。どうやら手錠されてるらしい。うーんアウト。
古ぼけたスクールバッグを探って、指示通りにスマホを出した。スマホは無残にも画面が割れている。
「ええ……これどしたの」
「連れてかれた時に録音してんのがバレてスマホ割られた。交渉してやっと手に入れられたのによ……!」
「怒るとこそこ?」
スマホを押すと一応画面がついた。明智少年が暗証番号を教えてくれる。非常事態だからとはいえ教えてくれるんだな。
俺は一瞬手を止めてから、明智少年に聞いた。
「録音アプリ……作動させて、どする? スマホ隠す?」
「……いや、通知オフにして元の場所に戻せ。下手に動かしたのをバレたくねえ」
「りょーかい」
明智少年は思案顔である。
というかこのアプリ……うーん……。
「……警察、呼ぶべきか? 現行犯逮捕、いや、でもそこまで大事にしちゃ……」
「なあ、少年」
俺はスマホの画面を明智少年に見せる。そこには、黒い中に白い模様が入った、特徴的なデザインのアプリ。
「このアプリ、何のアプリだ?」
イセカイナビ、なんで持ってるんだ。
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