【歌い手】余命一ヶ月の彼女【天月】

25話. ページ30

寒い日。息をはあ、と吐けば白い息が出てくる。
そんな曇りの日だった。


あ「何か久し振りだなぁ..」
天「そうだね..放置していてごめんなさい」


休日。
ちょうど休みだった翔太と私は近場を散歩していた。「ふふ、いいよ」と言って目線を下へずらす。___翔太と私の手。


恋人つなぎ、っていうやつ。
少し気恥ずかしいけど大丈夫だ。


でも、それよりも翔太の左手薬指。
私と同じの、綺麗な指輪。


それの方がやっぽど恥ずかしい。
そう。あの生放送から一ヶ月後、私は無事に結婚式をあげ、念願の夫婦になったのだった。


天「飲み物買ってくるから、Aはベンチに座ってて」


そう言って自動販売機へ向かう。


ベンチに座ってスマホを取り出し、ついったーを開く。
一ヶ月前のツイートを見る。


それは、『結婚しました！』のツイート。
純白の洋服に包んだ私と翔太のツーショット。その一個のツイートだけで、コメントが3000を超え、リツイートが5000を超えている。


それを見てくす、と笑っていると、いきなり首筋に冷たい感触が来て「ひゃあっ」と声が出てしまう。その感触がした方を見たら翔太がニコニコ笑ってペットボトルを二個持っていた。


『こんな寒いのに..』と心の中で思ってると、隣にどさっと座る翔太。


天「びっくりした？」
あ「心臓に悪かったわ」


そう言うと翔太はくす、と笑ってボトルのキャップを外し水を飲む。
私もボトルのキャップを外し、中を除く。ゆらゆら揺れる水に私の黒い瞳を曇りの空がうつる。


それを無視して、水を喉へ流し込む。


冷たい空気の中に冷たい水が体に流れた。

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