160:ギャルと生々流転 ページ10
____。
高専、最後の任務。
七海は教室で静かに補助監督を待っていた。
数ヶ月前に進路を提出した。
呪術師にはならない。
この世界から、身を退ける事にした。
最後の任務は対した任務じゃないらしい。
よかった。
がら、と扉が開く。
「おっひさしぶりー!七海クーン!」
ずかずかと教室に踏み込んで来るその人。
七海は顔を顰めた。
「なんで居るんですか、Aさん」
目の前までやってきたAに七海は言った。
Aは、ここを卒業して何年か経っている。
彼女は卒業して、海外へ拠点を移した。
現在はロンドンに研究室を構えていると聞いていたが。
「あれ?知らんのか、七海。お前の最後の任務、私が見届けるんだよ」
「は?補助監督は?」
「補助監督は、あ・た・し」
ふふん、とAは得意気に胸に手を置き言ってみせる。
最悪だ。最後の任務この人と一緒だなんて。
ろくな事がない。絶対ただでは帰れない。
七海はため息を吐き出した。
「まぁ、任務まで時間あるし…少しお喋りしよっかー」
Aは携帯画面で時間を確認する。
昔は折り畳み式携帯だったが、今はスマートフォンだった。
あのジャラついたストラップも今じゃ姿を消している。
「辞めんだっけ、この界隈」
やっぱりこの話題か。
七海はAの言葉を先回りし返した。
「止めても無駄ですよ」
Aは笑いながら「止めねーよ」と返してきた。
意外だ。もっとよく考えろとか言われると思った。
驚いた顔をしていたからか、Aは「何、止めて欲しかった?」と聞いてきた。
七海は首を横に振る。
「だろうな。私、人の人生左右する程人間出来てねーし。…そうだ!卒業記念に、説法説いてやろうか!」
腐っても寺の子だし、Aは付け足す。
そして、Aは七海の顔をまじまじ見ると「よし」と繋げた。
「生々流転!!」
「…流転?それ、貴方の術式の奥義でしょ」
領域展開の一歩手前。
一度しか見たことは無い。
言ってやると、Aはため息をつきながら「違うわ」と返した。
「全ての者は、絶えず生まれ変化し移り変わる。感情も命も、全部同じ。だから、呪術師辞めるなんてさ、死んで別の人生スタートさせるみたいなもんでしょ」
大層な話じゃないよ、Aは付け足す。
「人間は、死ぬと生きるを繰り返し、移り変わり生きていくんだから」
だからさ、Aは言う。
「好きに選べば良いんだよ、辞めるなんて難しい話じゃない。ちょっと移り変わるだけなんだし」
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鼻毛太郎(プロフ) - 華花。さん» コメント有難うございます!これでいいのか...?と悩む時期が続いていた中、温かいコメントを頂けて本当に泣くほど感謝してます;;現在5章目を製作中なので、しばしお待ちを…!今後もギャルと呪術を宜しくお願い致します! (2021年4月21日 11時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - いつも緊張して送れませんでしたが初コメント失礼します!もう作者様は言葉選びから構成まで最高すぎます…素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年3月1日 0時