164:ギャルと祓う ページ14
あの呪いの王が………他人を治した?
七海は半信半疑にAを見た。
Aは未だ地面に座り込んだまま放心している。
たとえ、悠仁が治したがったとしても宿儺はその意見を呑まないだろう。
彼は天上天下唯我独尊、己の快不快だけが全てなはず。
何か企みがある。いやでもアレは、そんな悪意があるものにも見えなかった。
「Aさん、」
七海が尋ねる。
「貴方と宿儺、一体何があるんですか?」
「…」
Aは短い時間だったが黙っていた。
そして、少し考え七海へ目を向ける。
「…正直わからん。アイツ、私の事知ってるっぽいんだよね」
でも、その話は後にしよう。Aは真人の方へ視線を移す。
ガクガクと震える真人。初めての領域展開に、身体と呪力消費が追いついていない。
それを表すかの如く、身体の再生が間に合っていない。
既に体勢を立て終えた悠仁は、術師2人と目を合わす。
そして、それが合図だったかのように駆けた。
今祓わずしていつ祓う。
祓うのなら、確実に今しかない。
呪力の残りカスを振り絞り、真人は大きく膨らむ。
悠仁の駆ける足が止まることはなかった。
踏み込み、拳を作り、腕を引き。
そして、呪力の纏った拳を真人の腹へと叩きつけた。
七海とAがその光景をじっと見守る。
逕庭拳、それに賭ける。悠仁のポテンシャルに賭ける。
同時、真人は風船のように弾けた。
悠仁は呆気に取られる。
何処だ、継ぎ接ぎの呪霊は。何処に行った。
「排水溝…!」
Aが声を張ったかと思えば、悠仁の後ろを素早い速さで駆ける影。
悠仁は影を目で追うよりも早く、排水溝に目が向いた。
「ばぁいばーい、楽しかったよ〜」
液体のように形を変え、余った箇所で手の形を作りこちらへ振る真人。
排水溝の穴へぬるりと入っていくところだった。
「待てッッ!!!」
まだ終わってないぞ。まだ、話は終わってない。
叫びたい気持ちは山々だった。
勿論、はなから言葉を交わし分かり合えるとも思っていないし、悠仁にも話し合う気は無かったが。
影が排水溝前で止まったかと思えば、素早く殴り抜く。
七海の姿だ。
だが、殴った感触もなければ排水溝に呪霊の姿はない。七海はすぐに、地下道にて任務を熟す猪野へ連絡した。
あの呪霊は今の君なら祓える。
Aは肩で息をしながら成り行きを見守っていた。
無理だったか、思った矢先Aの視界の端で何かが倒れた。
反射的に目を向け、Aは瞳を見開いた。
「悠仁…ッ!!」
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鼻毛太郎(プロフ) - 華花。さん» コメント有難うございます!これでいいのか...?と悩む時期が続いていた中、温かいコメントを頂けて本当に泣くほど感謝してます;;現在5章目を製作中なので、しばしお待ちを…!今後もギャルと呪術を宜しくお願い致します! (2021年4月21日 11時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - いつも緊張して送れませんでしたが初コメント失礼します!もう作者様は言葉選びから構成まで最高すぎます…素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年3月1日 0時