ーー橙15 ページ16
ーー連れさってくれれば。
「そういえば、昨日夕焼け見たろ？あのぐらいの時間を黄昏時っていうらしいぞ。」
「...黄昏時？」
「そう、黄昏時。逢魔が時とも言われていて、日がくれてから暗くなり始めるまでの間。魔が活動し始める時間。だから魔に逢う。そして逢ったら最後、連れていかれてしまうんだと。」
まあ、昔信じられてただけだけどな。
Aには言っておきたくて、と笑う。
「そうなんですか？初めて聞きました。」
私はそう言ってまた、空を見上げた。
...黄昏時か...もし、もしも本当にそんなことが起きるなら、こんな思いを、願ってしまった未来を、...私を
連れさってほしい。
なんて無理か。そんなことを思いながら修先輩と２人、夕焼けに染まる街を家に向かって歩いた。
たわいない話をしていると、すぐに家に着いた。
「ありがとうございました。」
そう言って今日も見送ろうとした私に
「家ん中入れ。Aはちょっと目を離すとすぐトラブルおこすからな。今日赤司ん家なんだろ？」
そう言って家に入るよう促す。
「人をトラブルメーカーみたいに言わないでください。て言うかなんで今日征の家に戻るって知ってるんですか？ストーカーですか？」
否定出来ないけど認めたくないことを言われ、誤魔化すように修先輩をストーカー呼ばわりする。
「否定出来ないだろ？トラブルメーカーさん？て言うか、人をストーカー呼ばわりすんなっつーの。赤司に聞いただけだから。」
反論できない...。このまま話しても確実に言い負かされるから、ここは退散してしまおうと修先輩に声を掛ける。
「じゃあ、私もう帰ります！！」
こらえきれない、とでも言うように修先輩が吹き出して笑う。むかついたけど1度息を吸って落ち着いてから深く頭を下げる。
「今日は、ほんとにありがとうございました。」
そして顔を上げ目を合わせて告げる。
「私、征を好きでいるのは今日で最後にします。」
それでは、
そういって私は固まってしまった修先輩を横目に家に入っていった。
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作者名：真紘
| 作成日時：2017年6月15日 19時
