ーー橙13 ページ14
13ーー触れたら、壊れちゃう
「それで?いったいなにがあった。」
ちょっとまってろ?そう言っていなくなった修先輩をベンチに座って待っていると2本のペットボトルを持って戻ってきた。
修先輩は私にペットボトルを差し出しながら隣に座りもう1本のペットボトルを開けて1口飲む。そしてちらりと私を見た。
「...あの公園にいたもうひとりの子、征の彼女なんです。それで征って呼ぶな、一緒に帰るな、関わるな、征をとらないで、とお叱りをうけました。」
あまり気にしていない風に、ちょっとふざけた感じをだして話す。
「私は小さな頃の約束で征を縛っているらしいです。征はなんとも思ってないんだからそんな約束で征を縛るな、と」
言われちゃいました。
小さくそう言って下を向く。また溢れだした止まったはずの涙を見られないように。
唇を噛んで出そうになる声を抑えているとポン、と頭に修先輩の手が乗った。
「とりあえず、頑張ったな。お疲れ。俺は何も聞いてないから、思っていること全部吐き出せ。ゆっくりでいい、泣いてもいいから。」
大きくて、暖かい手に加えて修先輩の優しさが嬉しかった私はぽつり、ぽつりと本音を吐き出し始めた。
「...っ...征の事...好きだっ...けど...でもっ...ヒック」
頭にあった手はいつの間にか、言葉に詰まってしまった私の背中を安心させるように一定のリズムでポンポンと叩いている。
そのリズムに安心して、どうにか涙を止めて話を続ける。
「...征に、彼女が...彼女が出来たから...」
「私は...諦めなきゃ、なのに...征は今までのまま、一緒にいようとする。でもこれ以上一緒にいたら私...きっと気持ちを、伝えてしまう。」
「ただでさえ...征は今にも私の側からいなくなりそうなのに...!」
「触れたら、壊れそうな...危うい関係なのに。伝えてしまったら、」
壊れそうだ。
この関係が。私と征の他の人とは少し違う絆が。全て壊れてしまう。
言葉に出来なかった最後の私の思いを察した修先輩は
「Aは、壊したくないんだな。壊れるのが怖いか?」
頷く私を見て何かを決心したように頷き、私の頭を撫でた。
「いいか、A。よく聞けよ?」
「俺は、Aが好きだ。」
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作者名:真紘 | 作成日時:2017年6月15日 19時