ーー橙11 ページ12
ーーそれ、でも。
美咲ちゃんの後ろについて、少し道を戻って修先輩の家の方の道へ行くと、小さな公園についた。
ブランコに座ると
「Aちゃんも座りなよ」
と隣に座るよう促される。
うん、と言われるまま隣のブランコに座ると、それっきりどちらもはなさなくなったためゆっくりとブランコを漕いでゆらゆらさせる。
「あのさ、」
美咲ちゃんが切り出した。
「今、赤司くんの彼女は私、だよね？」
ーーどきん、と跳ねた鼓動を無視して私は頷く。
「じゃあ、なんで赤司くんは私に名前を呼ばせてくれないの？Aちゃんは征って呼んでるのに。なんで学校の帰りもAちゃんを誘うの？昨日だってお願いして初めて2人で帰ったのに、赤司くんなんかうわの空だったし…彼女は私なのに、なんで？」
ーなんで？そう聞かれても私は征じゃないのだからわからない。
「...そんなの、私にだってわかんないよ。私が知りたいくらいだ。」
思わず本音が零れた。
「Aちゃん、お願いがあるんだけど。」
嫌な予感がした。
「赤司くんのこと、征って呼ばないで。一緒に帰ろうって言われても、断って。赤司くんに関わるのを避けて。赤司くんを、」
とらないで。
ぐさ、っと心になにかが刺さった。
それと同時に、順調だ。という征の一言が頭の中を回る。
そっか、2人はちゃんと好き合っているのか。私なんか、きっとなんでもない。
今、征と呼ぶのをやめても、征を避けても。征にとってはなんともないのかもしれない。
ちゃんと征を諦められるきっかけが欲しかったのは私じゃないか。
...でも。......それでも。
「ごめん、それは、出来ない。でも、美咲ちゃんから征を取るつもりもない。」
私の精一杯の反抗。取るつもりなんかない。出来ない。だって征も美咲ちゃんが好きなのだから。
邪魔する事なんて、できない。
それでも、やっぱり私は征が好きだ。
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作者名：真紘
| 作成日時：2017年6月15日 19時
