箱庭少女の孤高哀歌【瞬木隼人】Part13

#そういう事じゃないのに ページ25

瞬木「なに難しい顔してんだよ、A」

A「はー君…！」



監督の言葉が気になって、1人で悶々と考えていたら
不意にはー君が私の顔を覗き込んで来て、私は思わず目を見開いた。

はー君は腰に手を当て私を見下ろすと「さっきの監督の事か？」と私の心を皆帆君のように見透かした。


私は苦笑いを零してこっそりイクサルフリートの方を見る。


向こうの人達は……怖い。

目付きとか顔付きとか雰囲気が……怖い。


近付いただけで身の毛がよだつような。
見ているだけでも震え上がってしまうような。


嫌な……本当に、嫌なモノが……あの人達にある。


まるで……私の、義妹達に対するあの醜い感情が全面から出ているような感じ……

ううん、あの人達からはそれ以上のモノを感じる。



もっと暗くて、ぐちゃぐちゃで、真っ黒な感情の塊を。



A「……ねぇ、はー君」



考えている内にこっちまでその真っ黒な感情に飲み込まれてしまいそうで。

私はそっと目をそらすと、はー君の方をゆっくり向いて、口を開いた。



瞬木「ん？なんだ？」

A「……気を付けて」

瞬木「…何に？」

A「何に、って…あの人達に決まってるじゃない」



わかっていない様子のはー君にわかりやすく伝える為、イクサルフリートの方をこっそり指差してそう告げた。

はー君は私の指差した方を見て首を傾げると、次に私の方を見る。
そうして何を思ったのか、ﾌｯと優しい笑みを零すと
私の頭の上に手を置いた。



瞬木「心配すんなって、アイツらは必要以上に脅して来るだけだろ？相変わらず臆病だな」

A「ちっ…違うの…！そうじゃなくって…！」

瞬木「アイツらなんか軽く捻り潰して、あの大口黙らせてやるから。待ってろって」

A「は、はー君…！」



……そういう事じゃないのに。

怖いとかも確かにあるけど…根本的な事はそうじゃないのに。


はー君はまだ私が臆病だと思っているみたい。

ﾎﾟﾝﾎﾟﾝと宥めるように頭を撫でてから、彼はグラウンドに入って行った。



A「………はー君………」

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