サファイアは追求する ページ32
今度は一松とトド松が漫才のような会話を繰り広げ始め、チョロ松はそれを尻目に自分のスマホからおそ松に電話を掛けようとした。
電話帳からおそ松を選び、そのまま通話ボタンをタッチしようとしたその時
不意にガチャリと玄関の扉が開き、その場にいた一同の視線がそこに集まる。
「………ただいま」
やって来たのは今呼び戻そうとした内の1人であるAだった。
しかし何だか様子が可笑しい。
いつもなら帰って来れば元気よく「ただいま!」と言うはずなのだが、今のはポツリとまるで呟くようだった。
更に顔は俯かせ、彼女の取得である元気さが感じられない。
何より彼女の目は赤く腫れていて、一瞬で何かがあったんだとその場の全員が悟った。
「……A?どうしたんだ…?」
刹那の沈黙の後、恐る恐るといった様子でカラ松がこの場全員を代弁して尋ねた。
するとAはゆっくりと兄弟達の方を見遣り、少しの間無表情で彼等を見つめる。
普段の無邪気な微笑みを湛えるAが見慣れた兄弟達には、その時の彼女の表情はまるで別人のように思えて内心怯えていたが
その後眉を下げ、ぎこちなく笑みを浮かべると「何でもないよ」と首を横に振った。
「な…何でもないわけはないでしょ?なんかいつもと全然違うもん!」
「目ぇ真っ赤!泣いた!」
「よくそんな顔で何でもないって言えたね…」
「……」
「おそ松と何か…あったのか?
もしかして喧嘩した……とか?」
「……………」
Aのしおらしい態度は珍しい…というよりほとんど見た事がなく
兄弟達は戸惑い、チョロ松に至っては声も出せないでいた。
それでも彼女に何があったのか気になるらしく、カラ松はそっとAに尋ねると
Aはまた俯き、黙り込んでしまった。
だが直後に顔を歪ませ泣きそうな顔になると
抱いていたクロを顔に寄せて顔を隠すようにし、ただ首を横に振った。
「………何でも、ないもん」
「いや、しかしA…」
「今日、もうお仕事休むね」
更に追求しようとするカラ松の言葉に被せるようにAは少し強い口調でそう言い放つと
コツコツと歩いて兄弟達の横を素通りして、自室の方へと向かってしまった。
その間誰一人として声を掛ける勇気も無く
彼等は黙って彼女が扉の奥へ消えて行くのをその場で眺めていた。
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*IJu*(プロフ) - 腐女子さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてうれしいです…!更新頑張ります〜(*´∀`) (2018年4月11日 1時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
腐女子 - 面白かったです!更新お待ちしてます! (2018年4月8日 0時) (レス) id: 9891d1bd62 (このIDを非表示/違反報告)
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